「一生眠ったままでいいのに」
そしたら一生あの目に睨まれることもない。
「わけの分からないことを言ってんじゃねェバカヤロウ」
ぱちりと開かれたその目にやっぱり睨まれた。
「なんだ…起きてた」
豹なのに狸寝入りってなんなの?なんて言っても、この男には通じない。
「疲れて眠るしかない身体にしてやろうか」
「万年発情期」
散らされた衣服を拾い上げてバスルームに向かおうとすればその腕を思い切り引かれて。ばん、と音を立ててベットの上に引き戻されれば苦しいほどに口付けを浴びせられて。やっとのことで離せばさも愉しそうに口角を上げて笑って。
「まだまだ余裕、無いみたいだな」
「…生意気」
憎たらしいほどのその男に与えられた温もり。シャワーじゃ落とせない代物なんて厄介だなんて、そしてまた噛みつく。
「歯形残さないで」
「色気ねぇな」
「誰のせいよ」
本当、ばか。
─ぷるぷるぷるぷるぷるぷるぷる、がちゃ
「…はい、なんでしょうか」
目が覚めたときにはもう隣に彼の姿はなくて、ベット脇の電伝虫があたしを夢の中から引きずりだしていた。
『あァ、エムか!今すぐ俺ンとこに来い、任務だ。ルッチはもう来てんぞ!』
「…確信犯か」
『あァ?』
次の任務の司令、ね。ルッチが来てるって…あぁ、もう。
次の任務は、彼との仕事。
「分かりました、すぐに向かいます」
未だに気だるい身体に鞭を打って、夢の中の彼に名残を感じながらベットから抜け出した。
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