悪魔の実を食べたわけでもなく、特殊な訓練で得たわけでもない。ただあの日、あの時を境に身についていた事を知った能力。
「分かんない。そこまで大した能力でもないし」
「バカ!大した能力なことがあるか!」
「それがどんなに脅威になると思っとるんじゃ!」
二人はけろりと話すあたしに向かって少し必死な形相でいた。
「この島ならどこまでを感じ取れるんじゃ?」
「……この島全域はある程度」
「それだけあれば上等だ、エムの最大の武器じゃねぇか!」
「んー任務のときは便利だけどねー」
実際、この島の全域くらいなら意識を研ぎ澄まさなくても解る。任務でもターゲットの行動や居場所、人数から力量にいたるまで。大抵のことは“気配”として探ることができる。
この職業においては、確かに六式に次いで重宝する力なのかもしれない。
彼らはそう言うと突然神妙な面持ちであたしを見つめた。
「どうしたの?」
あたしがそう聞けば二人は少し俯いて言った。
「エムみたいな力…わしも使えるようになるじゃろうか…?」
「…え?」
普段はそんなふうに神妙になったりすることのない二人が同じ顔して同じことを願っていることに、少し驚いた。
「…どうして?」
少し眉を寄せて彼らに尋ねた。こんな能力をもっていたって意味の無かったあの頃の自分を思い出したから。
「強くなりてぇからにきまってんだろ!」
返ってきた答えはあまりにも単純明快で、あまりにも純粋だった。
「今はまだまだじゃが、いつかエムに勝ちたいんじゃ!」
「エムみてぇな力じゃなくてもいい、もっと強くなりてぇんだ。俺は誰にも負けたくねぇ」
あまりにも真っ直ぐな瞳に突かれた気持ちだった。
彼らはそう言うと突然神妙な面持ちであたしを見つめた
それぞれがあろうとする強さは違う。少なくとも、あたしとではあまりにも。
「…きっとなれるよ」
この道を歩くと決めたのは強くなりたいからじゃない。こんな能力を呪った過去だってある。
「本当かのう…?!」
「俺らが勝てるまで弱くなってんじゃねぇぞ!」
彼が殺しをすることに心を痛めたりなんてしないし、あたしも血に染まることを拒んだりはしない。
ただ、あたしとは違う─
「頑張ってね」
「なぁエム、これから俺と訓練してくれよ。鉄塊を応用した俺の新技を試してぇんだ」
あまりにも輝いた目には少なくとも闇の正義なんて感じられないから。
「相手したいのは山々なんだけど先約があるの。ごめん」
「はぁーっ?!エムっ、カクばっかずりぃぞっ!」
「ふん、日頃の行いが悪いからじゃ」
放っておいても二人で訓練が出来そうな彼らを修練場に残してあたしは彼らよりも子供のように拗ねる大人の元へ、歩みを進めた。
END
(年齢やCP9設定などに難有りすみません…)
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