「──島の793名を武力行使前提の反政府軍として発見、及び即時殲滅。死亡を確認。情報などの収穫は期待出来ずまた発見もなし─…
んま、護送船の海軍の報告とも同じだな。島の処分も確認済みだ。ご苦労だったなエム」
「政府にとってメリットになることも特に無いと。まったくの骨折り損、どうしてくれんの」
「仕事だろォが文句言うな!まぁCP9が動くまでもなかったようなヤマだ。ルッチたちも帰ってきたことだし問題ねぇだろ」
長官の椅子がギシッ…と鳴いた。
ていうかお偉いさんもあたしたちじゃなくていいような仕事を回してくるな、ヒマだとでも思われてるの?冗談じゃない、思う存分酷使してくれて。
「これでいいですよ」
「あ?」
部屋の壁に沿って並べられた所詮簡易ワインセラー。
「今回の骨折り損の謝礼。貰ってくね」
「ばっ…!!それいくらすっと思ってやがる!!」
「それじゃ、失礼しましたー」
「ばっか…ちょっと待ちやがれー!!」
報告を済ませたことで任務はようやく終わりを迎える。カチャリと閉まる扉の音が広く長い廊下に響いた。
「お疲れ様じゃなーエムー」
長官室から出るとその脇からは聞きなれた声が聞こえた。
「あ、カク。帰ってきてたの?」
「おう、2、3日前にの。しかし何を言うかおぬし…エムならそれくらいとっくに知っておったじゃろう」
どーかな、と笑いかけるとカクはあたしの手を引いた。
「これから訓練がしたいんじゃが…相手をしてくれぬかの?」
不安そうに眉を寄せてまるく大きな瞳であたしを見る、これも彼の技術。…ま、若い内限定だけどね。
ルッチや長官には無理。
というか、あたしが無理。
「一度部屋に戻ってからでいい?」
「もちろんじゃ!修練場で待っとるの!」
まだ15歳のクセに口調の年寄りくさい少年はよくあたし懐いてくれている。その腕をブンブンと振り回してながら走っていく彼の背中に、思わず笑みが零れた。
「…あんな可愛くなかったけどな」
まだ少しの幼さの残る彼を見ながら可愛いなんて思ったのに。少しだけ憎たらしい豹を思った自分に苦笑がもれた。
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