ジャブラはどうしたっていつまで経ったってあたしに振り向かない。いつだってそう今日だってそう。
「ジャブラ」
「あァ?」
呼んだら振り向いた。
いやでも別に物理的な話をしてるんじゃない、そりゃ呼んで振り向かせるなんて簡単だ。
「またフラれてんの」
「…なんで語尾にクエスチョンマークをつけねぇ」
「だって確定事項だから」
「お前は一々腹立つな」
「ていうかナマズに告白されて首を縦にふるような人間をあたしは人間として認めたくない」
「泣いて良いか」
ばーかばーか、泣きそうなのはあたしの方だナマズ。
…ていうかそんなナマズが告白してフラれて帰ってくる度にホッとする反面左胸がぎゅーってなるあたしは何なんだろ、人間じゃないのかな。ナマズかな。ううん可愛い普通の殺し屋さん。
まぁあたしは別にただの人間じゃないから良いんだ、悪魔の実の能力者だしな、ウチのリーダーなんか豹人間だしな、化け猫だしな、なんか人型で充分キモいしな。
「〜…痛っ!いきなり現れんな!つーか今あたしの頭グーで殴っただろ!」
「腹立たしいこと言ったのお前だろうが」
「!ルッチあたしの心が読めるのか!」
「(こいつは自分の思ってることが全部口に出てるのに未だに気づいてないのか…?)」
ルッチと話してたらいつの間にかジャブラは20mくらい先にいるし、ルッチに嵐脚かまして剃で追い付いたらジャブラは「しつけぇな」とかなんか耳まで真っ赤にしてるし意味分かんない。
「で、今日は誰に告ってきたの。バルザック?ジャンソン?ゴルバディ?」
「候補の名前がやたらゴツくねぇか?」
「ねぇ誰」
「べ、別に誰でも構わねぇだ狼牙!」
「それもそうだね」
「案外あっさりしてんなオイ」
だってどうせジャブラをふった奴らだし。ジャブラB専だし。
「いやB専だと困るな、あたし可愛いしな」
「…とりあえずもう突っ込まねぇ」
いつの間にか赤かった顔も普通になって溜め息なんかついて残念そうに頭掻いてる。
そんなにフラレたのショックだったの?そんなにバルボッサ好きだったの?
ねぇねぇどうしてあたしのこと女として見てくれないの?
あぁもう、鼻先がツーンとして、気を抜いたら泣いてしまいそう。
「…俺は」
何よ何よ、極めつけ?
今ここで大声で泣いたら、ジャブラはどんなに迷惑そうな顔するんだろう。嫌だ嫌だ嫌われたくない。今にもこぼれ落ちそうな涙を瞳の中で必死に支える。
でもダメだ、もうジャブラと同じ歩調でなんか歩けない。少しずつ、本当に少しずつだけどジャブラの背中と距離が広がる。
「ジャブ…」
あ、もう瞳決壊。
「俺はお前可愛いと思うよ」
彼女は彼によく似ている何度彼が顔を真っ赤にして告白しても彼女は一向に告白とは気付かない。
「………(あいつ思ってることほとんど全部口に出てるのに気付かないのはなんでだ、わざとか?)」
「うわあああん!!!」
「ななななんで泣くんだよ?!(思わず立ち止まって振り返っちまった!)」
「だってジャブラはB専だもの!!」
「そりゃお前が勝手に思い込んでるだけだ狼牙!!」
いつになったらあたしはジャブラに振り向いてもらえるんだ!
END
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