「ンマー、帰ってきたようだな、ルッチ」
「遅くなってしまい申し訳ないッポー」
右肩に担ぎあげているのは倉庫から出してきた木材。左腕に抱えてるのは倉庫からひっついて離れない、少女と呼んでも見えなくはない女。
「ごめんなさいアイスバーグさん…」
「エムが気にする必要はねェ。ンマー、好きなだけ見学してってくれ」
「ありがとうございますっ!」
「しかしエム可愛いな、俺が抱きたいくらいだ」
「この無礼も──っ…ああアイスバーグさん!!」
余計な事を言ってくれるな、面倒くせぇ。俺には相対してエムはニコニコにこにこ、やっぱり楽しそうに笑ってやがる。
「そっ…そろそろ昼食ですが本社に戻りますか?」
「ああ、…あぁ…そうしようか」
んじゃ、あとは頼んだぞルッチ、と一言かけると社長は行ってしまった。残されたのは広い作業場に立っている俺とハットリと。
「あたし達もお昼食べよ?」
エム、だけだ。
「おいし?」
「…あぁ、ポッポー」
ハットリに箸でつまみ上げたおかずを食わしてやれば、ずいぶん幸せそうな顔をする。実際エムは料理の腕も磨かれている。
「ハットリじゃなくってさ、ルッチに聞いてるの!」
「うまいと言ってるだろうがクルッポー」
「んもー!ちゃんと言ってくれないと分かんないよーっ」
膨れて拗ねたように振る舞うエムは妙に可愛げがあって。美人は何やっても大抵の事は良く見えるもんだなんて、くだらねぇ事を思い知った。
「ルッチ?」
あぁ、くだらねぇな。
ランチタイムレッド美味いかどうかなんて愚問は自分で確かめさせてやる。
「……らしくない」
「お前もな」
唇を離せば真っ直ぐに向けられる視線。
「クルッポー、これもフリには必要だ」
囁いてやってもエムは紅くなんてならない女だから。
END
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