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「ルッチって」
猫は小判を持ち上げて、こちらを見た。
「ロリコン、なの?」
エムに辞書、なんてなんの冗談だ。
「…誰にもらった」
「チョーカン」
また余計なものを与えてくれたものだ。エムが珍しがって物を扱っている時に都合が良いことなどあった例しもない。
「ルッチってロリコンなの?」
右手の中で、ガラスの割れる音がした。みてみろ、わけのわからねぇ事を調べ始めた。
「…変な事調べてんじゃねェ」
「だってだって!」
寝そべっていた身体を起こして膝の上に乗り込んだエムはご丁寧に指差し呈示くださった。
「調べてみろって言われたから」
そう言ってその単語を指差す。
“[ロリータコンプレックス]…略称:ロリコン 小児性愛、幼い異性への恋愛的関心、…”
「ルッチって、ろりーた、こんぷれっくす、なの?」
そもそもエムに畏まった文献の文字など理解できるわけがない。その少女はただ長い睫毛に縁取られた澄んだ瞳を瞬かせた。
「ねえ、ルッチ?」
あぁ、めんどくせェ。
「エム」
空気を持ち上げるように軽い身体を抱えて立ち上がる。ん?なんて不思議そうな目で俺を見る少女が、憎らしいほどに可愛らしく笑う。
「………いや」
無邪気な笑顔への想いに嘘は無い小判を与えたバカの元に向けた足を方向転換。スプリングも軋まないほどの身体は、静かにそこに乗った。
「お前は俺のなんだ」
言ってみれば、簡単な事。
「コイビト!」
君は俺にとって対等の存在。
END
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