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俺達に課せられた任務は既に実行された後だった。鼻に付く独特の匂いはその部屋に充満し、その真ん中には死体が13。その部屋の窓枠に、一人の少女が腰掛けていた。
「きれいなあか」
身体中に飛び散った赤を手に取り空にかざして楽しそうに眺めて。そして俺達を見つけるなり、丸い目を見開いて尋ねてきやがった。
「おねえさんたちだれ?」
「エム」
手招きをするでもなくただ振り向いてその名を呼べばそいつは満面に笑みを浮かべて駆け寄ってきた。
「なにっ、お仕事?」
「長官殿から召集だ。着替えて来い」
「はーい」
その後ろ姿は幼さとあどけなさ以外の何物も感じさせない。どこの誰がこのガキを、一流の殺し屋だと言える。
銃弾の突き抜ける音など俺たちには無い。
「もう終わり?」
「ああ。あとは資料を回収したら、ここを出るぞ」
うん、そう言ってエムはまた駆け寄ってきた。腰の辺りで回りきらない腕で俺の身体にすり寄る。その小さい手にまとわり着くのは乾き始めた真っ赤な血。その手を見て、ふと思う。
「エム」
俺がこいつくらいの頃を。
「なにー?」
こんなに楽しそうに笑った事なんて無かった。
「帰るぞ」
燃えてブラッド起きてメモリー微笑んで、俺の背にすり寄って甘えた声で鳴いて。
「うん!」
お前にこんな傷跡は似合わない。
END
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