「好きか」
周りなんて、お構い無し。
「嫌いか」
そうよあなたは所詮俺様。
「普通」
「好きか嫌いだ」
「じゃあ嫌い」
そんなわけでも無いけど。
「ふざけるな」
「ふざけるな、じゃないわよ。答えろって言うから」
選べないじゃない、片方しか。
「片方で充分じゃねェか」
好きか嫌いか、なんて一体何を考えてるんだか知らないけど相変わらず身勝手な質問に溜め息も数知れず。ましてや対象が、
「大体生殖に好き嫌いなんて、ただの子作りじゃない」
「バカヤロウ。ただのとか言ってんじゃねェ」
その不機嫌丸出しの表情は目前まで迫ってきて、捕まれた手首に巻き付く指が錠のようにきつい。
「痛い」
「知るか」
その鋭い歯に噛みつかれるように口付けられて身体いっぱいに舌が這って。赤らんだ顔で彼を誘う自分が、やらしい。
「ん……っ…」
ふいにその強い眼が傷だらけの肌と一緒に映った。
ニヤリと口端を上げる様が本当にムカつくくらいに色っぽい。
「気持ち、よさそうだな」
「知らな、い」
口付けられる度に上がる息が整わなくてその鋭い眼に映る自分が酷く淫ら。
「そのただの子作りに浸ってるのは一体誰だ」
身体に聞くのが一番早いかなんて愉しげに言って、いつだってあなたは俺様。
溺れてるのが自分だけなんて思いたくないだけでしょ?「好きか」
「嫌いか」
驚くほど優しいキスに一言。
「好き」
俺が、なんて自信家。
END
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