日報 ブログ ::【ウィズ日記】6.まどろみのひととき〜インタールード・ある冒険者の休日 カント寺院の鐘が明け七つを告げる。鳥が鳴いて通る。 冬の朝の陽は低く、窓からの光は斜めにさし、その中に小さな埃が踊っている。 冒険者は目をさましてあたりを眺めた。豪華な調度、鮮やかな敷物。 地下4階を制して手に入れた宝の換金に成功し、この数週間はよい部屋に泊まっていた。少し前までは金がなくて馬小屋暮らしだったことを思えば、なんとも浮き沈みの激しいことだと、誰にとなくひとりごちる。少し慣れなくて、目覚めるたびに今自分がいる場所を確認する。ここはトレボーの城塞、冒険者の宿だ。 「おや、今日はずいぶん早いんだな。朝食はちょいと待っとくれよ」 階段をふみ一階に降りてきた冒険者に、頭のはげ上がった宿の亭主が声をかけ、食事の支度を始める。 他の宿泊客の姿はない。穴潜りなどしていると、規則正しい健康的な生活とはおさらばするしかなく、こんな時間に起きだして来る者といえば、朝の礼拝へ向かうプリーストくらいのものなのだろう。 「どうかね傷の方は。ふぁっふぁっ、この前はずいぶんとやられたようだったからな。 だが仲間に誰も死人がでなかったのは幸運さな。4階の守備隊、とくにニンジャにやられる奴は後を絶たないよ」 言われて、肩を少し持ち上げてみる。身体はどうやらもう問題なく動くようだった。傷は癒え、そろそろまた穴に潜る頃合いかもしれない。 やれやれ休暇も終わりかなと思うと、ウンザリと面倒なような、ピリッと引き締まるような、ないまぜな気持ちがした。まったく、危険と冒険を望んでいるのだか飽いているのだかわからない。 亭主が並べてくれた朝食を食べ始めながら、こまごまと朝の仕事を続ける彼を眺めるともなく眺める。今や頭もはげ上がり、腹の突き出た温和そうな彼も、元は自分達と同じ冒険者だったのだという。 いずれ自分も剣を置き、こんな風にカタギの暮らしに溶け込んでいく日が来るのだろうか。想像はあまり先に進まずに、壁に突き当たり霧に紛れる。 亭主に礼を言い、洗いざらした服と外套をつけ街へ出る。冬の空は澄み、街路には白い光が降っている。今日は市も立たないようで、物売りの声もない冷えた石畳に足音が響く。 酒場はまだ開いていないだろう。もうそれであとはたいして行くところもなかった。この城塞都市で冒険者が立ち寄るところといえば、ギルガメッシュの酒場の他にはカント寺院、ボルタック商店、町外れの訓練所くらいのものだ。 たわむれに、高い城壁に続く階段を昇ってみる。 石組みの隙間を埋めるしっくいは古く色あせ、銃眼についた血の染みは風雨に洗われ淡い褐色に残り、エールかなにかをこぼした跡と見分けもつかない。 風に髪を遊ばせるまま狭間胸壁にもたれ見おろせば、町外れに口を開ける迷宮がみえる。 誰が名付けたか「狂王の試練場」と呼ばれる魔の穴へと、冒険者達は鉄に身をよろい、微かな灯火と刃を手に、日々降りて行く。多くの者がそこで死に、残るはエールの染みばかりだ。 なんの為にそんなことを。黄金の為にか、栄誉の為にか。 風に問う答えはなく、視線を遠く山の稜線へと振り向ける。 故郷はあの方向だったか。どれくらい遠く来たのだろう。はるか彼方に隔たってしまったようにも、今でも同じところをぐるぐると、いくらも来ていないようにも思える。 ギルガメッシュの酒場に居着いている半エルフの吟遊詩人がいる。いつだったか、客の一人が彼に「お前さんの故郷の歌を聞かせてくれよ」とリクエストしたことがあった。 頼んだ客としては地方色豊かな民族音楽のようなものを望んでのことだったのかもしれなかったが、半エルフは「自分は隊商の生まれ、生来の流れ者で故郷は知らない」と笑い、どこにでもあるような山河や森野、風や花、鳥や魚、またあかあかと火のともる炉辺の憩いを歌った。要するにごく素朴な田舎歌だ。だが満座は静かに耳を傾けていた。誰もが似たようなものなのだろう、それぞれに遠く旅してきたのだ。 自分達というのは何なのだろう。 小さな頃、生まれた村のぐるりをそびえる四方の山は、時に自分を取り囲む柵のように感じたものだった。 あの向こうには何があるのか。いつかあそこを越えて、ずっと遠く、誰より遠くまで行くのだ。そう思った小さな頃、在りし日の丘に吹く風は今も自分に吹いているのか。 問いは泡のように生まれては消える。 ただ自分はまだ立ち止まってはいけないのだといつも思う。だが立ち止まらず、どこへ。 いつしか日は高く、城壁にたたずみ冷えた身体を暖めるべく酒場へと足を向ける。無愛想なマスターが小さく頷いて出迎える。 席を求めてカウンターを見ると、自分が口開け一人目かと思っていたが、先客の姿があった。仲間の一人だ。 「お、はやいな。もうすっかり傷もいいようじゃないか?俺達もそろそろまた潜ることになるな。この前侍や忍者の4人だけで潜ってる凶悪な感じのパーティーが、切り裂きの剣とワースレイヤーを拾って来たそうだぜ。 クソッ、いいなあ!早く俺達も下層にアタックして、いい装備に切り替えたいよな!」 冒険者の姿を見るや一方的に陽気な声をかける戦士にそうだな、と軽くうなずき返すうち、また一人仲間の姿が現れる。 「おや、もう具合はよろしいのですか?心配したんですよ」 そう声をかけた僧侶にすまない、もう大丈夫と答える間にまた一人。 「ああ皆さんお揃いで!聞いてください、とうとうマダルトの制御に成功しましたよ!」 あれよの間に辺りは騒がしくなり、酒杯が交わされる。仲間達は次の探索のことを、それが隣り合わせの死をはらむものであるということすら忘れてしまいそうに明るい声で、わいわいと話し合っている。 先ほどまで一人あれこれと考えていたことが途端に馬鹿馬鹿しいようで、やれやれと息をついた。 これがどこへ続く道なのかはわからない。しかし少なくとも同じように馬鹿な生き方しか出来ない連中にはことかかない道ではあるらしい。 いつか自分も死ぬだろう。あるいは強運あれば成功者たりうるかもしれない。それらは本質的な問題ではないようにも思える。思えるだけだ。よくはわからない。自分はもっと考えなければならない。もっと考え、もっと強く、もっと遠くまで。 だが今はもう少し、彼らとここにいるのも悪くはないさ。 しかしとはいえ、独り旅に慣れた身としては、あまり騒がしいのは苦手だ。 やれやれ、もう一度息をついた。 つもりが、どうやらそれは、思ったようにはうまくいかなかったらしいことに、冒険者は言われるまで気付かなかった。 「おい相棒、何笑ってんだ?」 ************* という上記SSは別にパーティーの誰とかってことない、どこかの一般冒険者Aさんのつぶやきということで。20年近く前ウィズ本出してらしたカド井 陽平さんのSSの影響が強く出てしまったかな。 さて少々間があきました。我等が冒険者達もしばしの休日を楽しんだことでしょう。 しかし休日といったって、このトレボーの城塞は施設少な杉で行くところも大してないんです。 なんたって城のメニューからはSSの通り「ギルガメッシュの酒場」「冒険者の宿」「ボルタック商店」「カント寺院」の四つだけ。町外れからは「迷宮」「訓練所」だけです。 中世は実際そんなものだったのでもありましょうが、ギルガメッシュで酒カッ喰らう以外にはおよそ娯楽らしいものがない。 しかしここで注目すべきは冒険者の宿です。この宿の宿泊料は部屋ごとに違い、 うまごや:無料 簡易寝台:10GP/一週間 エコノミールーム:50GP/一週間 スイートルーム:200/一週間 ロイヤルスイート:500/一週間 となっており、随分ひらきがあります。 前に1GPは1500円くらいかなーと仮説しましたが、これでいくとロイヤルスイートは週75万円、一泊あたりでも10万を越すのです。 うまごや貸すような雑な宿が、どれだけ本気出してみても部屋自体はたかの知れたものに違いなく、この値段はどう考えてもオプション含みでしょう。つまり豪華な食事や、医療またエステやマッサージ呼んだりとかのサービスがついてくる。 その証拠に、簡易寝台では週に1HPしか回復せず、オーク風情にかまれた傷が癒えるのにも一ヶ月寝込むを要すのですが、ロイヤルスイートでは週に10点回復します。寝床がフカフカになったくらいのことで自然治癒力が10倍化するとは考えにくく、ここには豪華な食事などによる栄養状態の向上や、医療や健康面のサービスが充実している分も含まれていると考えられます。 さらに人はパンのみにて生くるにあらざる訳で、休日にはメンタル面のケアをも心掛けなければなりません。 若く健康な冒険者達がその辺のことを考えないのも不自然です。こういった方面のことは英雄譚などには描かれない点、言わぬが花でもありましょうが、さればさ、言わぬは言うにいや勝る。 これもロイヤルスイートのオプションとして、城下最高級のサービスが用意されていることでしょう。 すなわち、男性冒険者にはツンデレ、ドジっこ、委員長に12人の妹などに囲まれてドンペリかましていただいたり、女性冒険者にはショタから俺様など各属性はもちろん、シャンパンタワーのきらめきをよそに9人の守護聖が自分を取り合うなどのスペシャルもご用意されているに違いないのです←← 幸い現在パーティーは、4階アロケーションセンターの死闘にて敵パーティーから手に入れた「RING OF DEATH(しのゆびわ)」の換金に成功したので、経済状況はすこぶる良好です。 この指輪はセンターで必ず手に入り、所持しているだけで体力みるみる削られる危険物で、気付かず持って歩いてるといつの間にか死んでるという、アイテム自体がトラップなのですが、これを回復しいしい頑張って持ち帰り、司教が鑑定に成功すれば25万Gで売れます。 逆に鑑定時うっかり触って呪われたら外せず、その解呪にも25万かかる博打アイテムですが、これをギガトールさんが首尾よく鑑定に成功し、一気に余裕出ました。 なので皆さんの労をねぎらい、無駄にロイヤルスイートに泊まっていただきました(笑) システム的に効率的だからといって、馬小屋に僧侶を泊めてMPだけ回復し魔法で治癒したりといった最適化プレーばかりしていないで、たまにはこういうのもゲームの楽しみ方でしょう。ドラクエで武闘家の武器がずっといっしょなのを不憫に思い、無駄にてつのつめ新品に買い替えたげるようなことです(笑) さて皆さんどんな休暇を過ごされたのでしょう。そこはご想像にお任せするとしましょう(笑) back ×
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