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::ファンタジー力学考3.A horse, a horse, my kingdom for a horse

前記事で体重60kg、速度4km/hの歩行は189kcal/hとしましたが、あれは基礎代謝ぶん含まれてる数値だそうです。勘違いしてました〜

純粋な歩行燃料は、129.6kcalとする資料あり。
とすると徒歩の燃費はさらによくなるのですが、これは水平歩行で、垂直移動はもっとかかる、つまり坂があると変わるし、立位保持ぶんのエネルギー消費が別計上。現実には不可分だけど。
維持エネルギーは1510kcal/日/60kg、これを24で割ると、62.9kcal/hだから、そのぶん引くとだいたい当てはまるようだけれど、寝てる時と起きてる時と分けずに24で割っていいのかしら。
などなど、難しいので、数値修正なしで。実際はもっと差あるよ、という方向にイメージしていただければいいかな。万事フンワリで。


さて馬ですが、現在の飼養標準によると、安静時の馬のエネルギー(Mcal/日)要求量と体重(W、kg)の関係式は、
600kg以下で1.4+0.03W
600kg以上で1.82+0.0383-0.000015W^2
を用いて算出するようです。
すると500kgの馬だと16.4Mkal/日(=16400kcal)。
重馬種で1000kgだと25.12Mkal/日になります。
体重が倍でも消費は倍になってないのは、表面積と質量の比から体温保持しやすいから。ベルクマンの法則のようなことですね。


激しい運動をすると実際の要求量は維持エネルギーの倍くらいになります。
資料によると、500kgの馬の場合、1時間の常歩(時速6〜7)で5MJ(メガジュール)の消費で、これは1195kcal、6.638おにぎり(これも純粋に水平歩行ぶんだけだと800kcal程度とも)。
おにぎりでなく実際の濃厚飼料では、燕麦で400g、トウモロコシで300gほどに相当。
30分の速歩で10MJ、10分の駈歩で8.33MJ。書いてなかったけど飛越入れたらもっとかな。扶助を出して歩様変えてるのだろうから、これはたぶん人を乗せての数値でしょう。

1日8時間を時速6.6kmの常歩で進んだとしたら52.8kmで、エネルギーは9560kcal 53.1おにぎり。
200km進むには30.3時間、36212kcal、201.18おにぎり。
維持エネルギーぶんが91おにぎり/日なので、4日で走破として、実際にはさらに364おにぎり必要。

また騎乗者が要するエネルギーは、一時間で346kcalほど。歩くより消費多いの。全身の筋肉を使用するし、エクササイズにいいんだって乗馬。
30.3hだと10483.8kcal、58.24おにぎり。



馬の要求エネルギーはだいたいイメージできました。
道中の青草だけでまかなえないでしょうから、燕麦、大麦、とうもろこし、ビート、などの濃厚飼料を携帯して旅することになりそうですが、馬が動くぶんの飼料と水を積んだらペイロード無くなっちゃう。意味ねー。
積載最大化するなら飼料はなるべく持ち歩かず宿場ごとに補給することに。
日本の江戸時代の街道の宿では、大体が馬の宿泊費は人間の倍料金だったよう。
慶長16年に幕府が定めた宿泊料金は人が3文、馬が6文で、食べる量のぶんだけ馬の方が宿賃が高い。以下にざっくりまとめると、

       人 馬
慶長16(1611) 3  6
元和8 (1622) 4  8
寛永19(1642) 6 16

これはいわゆる「木賃宿」の数値でしょうか。煮炊きの薪代(木賃)程度の料金をとって泊める自炊宿です。
米は持ち込みが原則だったようですが、馬の飼料は出してもらえたのでしょうかね?飼い葉も持ち込みだったら料金高い理由がない気もするので。単に馬の方が場所ふさぎだし、世話の手間があるからかもですが。

食事も提供する「旅籠」が増えだしたのは享保年間ごろからといいます。
「旅籠」とはもともと馬の飼料を入れるカゴのことで、まさに飼い葉を用意して客を待つ宿が、すなわち旅籠屋本来の意味でした。
旅籠の宿泊料金は享保3年(1718年)で主人35文、従者17文 馬35文で、これも馬が従者の倍高い。
幕末インフレ期では人が700文、馬が1貫400文という上旅籠もあったようですが、だいたい人馬の比は変わらなかったわけです。


また宿場には人馬の継立(つぎたて)をする問屋場(といやば)があり、駅伝で馬や飛脚を替えて荷や書状を届けます。
東海道は53の宿場があるけど、踏破にかかるのは普通片道13日です。
しかし1日何度も馬を替えるような急使リレーシステムを機能させる為には、これくらいの駅が必要だったのでしょう。

13世紀モンゴルの騎馬飛脚リレーは1日375km走ったといいます。
これは「馬」というより「駅」と「街道」というシステム自体こそが移動・運搬手段ともいえます。

例えば背に荷を載せる駄載だと馬一頭の運搬量は150kgくらいが限度ですが、輓曳なら1トンはいけるそう。これなら馬車に人数積めば、一気に一人辺り燃費も好成績に。ただしこれも車と道の状態が整っていればこそ能力最大化できるのです。

では次は「道」について考えてみます。つづく。
 

2016.06.29 (Wed) 02:01
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