日報 ブログ ::フラクサスの冬枯れ時 また3ヶ月近く更新空いてしまいましたか。チャットなかなか出れないのだけど、フリー場所設定板登録のみしてみました。 『神々の御座「スローンヒル」』ですが、ちょっと文面に皮肉がすぎるかしら。不快に思われる方あったら申し訳ない。フリーですから適宜改編していただければ、ということでひとつ。 イメージはほとんどファファード&グレイ・マウザーの「ランクマーの夏枯れ時」です。 名編です。登録に際して久々に読み返したら、声だして笑ってしまいました(笑) 当ブログでも何度か言及したことあった気のするフリッツ・ライバーのファファード&グレイ・マウザー。通称二剣士シリーズは、1930年代から半世紀書き継がれた古い小説ですが、コナンやエターナルチャンピォンらと比べ、海外小説らしい真顔で軽妙なユーモアがあっていいですね。 例えば「ランクマーの二剣士」の冒頭のやりとりから抄抜。 (ランクマーの城壁へ向かって二人の冒険者が歩いていく。街に近付くにつれ、行く手には二人に恨みや債権を持つ種々の者達が、手に手に武器を持ち待ち構えているのが目に入る) マウザー:俺の巾着の膨らみ加減は、おぬしのとおっつかっつさ。大酒飲みの朝の酒袋と同様にからっぽだ。ところで、あの百貫でぶは銀鰻亭の主人じゃないか? ファファード:(目をこらしてからうなずき) たかがブランデーの付けの為に、ご大層なことだ。 マウザー:付けの長さはせいぜい1ヤードそこそこなのにな。無論、ゆうべおぬしが銀鰻亭で暴れた時に叩き壊して火をつけた、二樽のブランデーも勘定に入っていることだろう。 ファファード:居酒屋の喧嘩で10対1の劣勢の時は、一番手近にあるものを使って勝たねばならん。まあ、しばしば奇妙な手段になりがちなのは認めるが。 といったピカレスクな調子。 ちなみにここでは長さの単位にヤードが使われてますが、他にも二剣士は「矢頃ふたつ分」の距離とか「心拍が10打つ間」の時間とか、単位数の表現がファンタジーなのも面白いです。 戦闘描写も、著者ライバーがフェンシングの名手だったこともあり、ならではの表現がみられます。 二人の主人公が、抜け目なく華麗に立ち回って目もくらむ財宝を手にしたかと思えば、女性にはわりと簡単に騙されてスカンピンに巻き上げられたり、酒で失敗したりしがちで憎めないのもいいです。 しかし考えてみれば古いファンタジー小説の名作とされる主人公に、健全な正義の勇者タイプは多くないのか。 コナンは無骨な野蛮人、エルリックは虚弱のアルビノ退廃皇帝、ハロルド・シェイはヘラっとした三枚目親父、ジレルは烈火の気性の女戦士、二剣士は悪漢ボンクラ凸凹コンビ。 例えば指輪物語のフロドに関して、原作では映画フロドよりずっとしっかりした人物ではあるんですが、よく聞くのが「JRPGならアラゴルンが主人公だよね」というもの。 確かにフロド弱いですから。だがそこがいい。 一応ぼかして記述しますが、あの山の場面でも、フロドは負けてしまいますが「彼」の介入により結果オーライでした。 サムが何度も警戒をうながしても、フロドは彼を許し続けたから、もっと言えば、ビルボが彼に情けをかけ、殺さなかったからこそ、あの結果になるわけです。 超人的な意思力で敵に打ち勝つ勇者個人のチート活躍によってでなく、素朴な人物達の情けの重なりこそが結果的にことを成すという、これはリドル構造的なカタルシスでもあります。 「ランクマーの夏枯れ時」でも、ある意味で似た構造が現れます。 極めて劇的な場面を演じることになる主人公達ですが、マウザーは当座の難局に対し実質的に立ち回っていたのだし、ファファードに至っては酔って暴れとっただけだ(笑) これらには入力としての人為と、出力としての奇跡の間に距離があります。どうしてこうなった。途中の式にどんな係数がかかったのか?そこに神秘性が生じるのだと思います。 前項で少し述べた「謎と迷宮」の構造とは、一つにはつまりこういうことかも知れません。この主題はあせらずまたゆっくり考えていきたいですけど。 こうしたらああなった。世界というブラックボックスに入れたものがこう出てきた。 その前後の関連性を人は考える。これは呪術と魔法の発生のようなことで。 例えばテニスをやるとします。サーブがうまくきまらなかった。なんでや。 そこで「このボールはゲンが悪い」と取り替えたとします。これが呪術で、何かしら出来事の前後に関連と因果を見いだすバイアスですが、その志向自体は世界を直観的に把握しようという心理ではないでしょうか。 さて大げさに飛躍するまえに強引にしめましょう。 ちなみにう・ん・ち・く(たまの続巻読んでないなあ) ファイナルファンタジー初期作品はCD&Dのモンスター名やファンタジー小説のネタ多く使ってるんですが、アイテム「ねこのつめ」は、3や4ではモンク装備でしたが、1と2ではナイフの最強ランクでして、これはグレイ・マウザーの短剣の銘「猫の爪(Cat's Claw)」が元です。またマウザーの長剣は手術刀(Scalpel)、ファファードの長剣が灰色杖(Gray Wand)で短剣が心臓抉り(Heartseeker)となってます。 元ネタといえば「スローンヒル」は、二剣士の他にも丸出しなものばっかりで、D&Dグレイホークの聖カスバートや、クトゥルフのダゴンとハイドラなど。わざわざ説明すると軽く恥ずかしいね。 back ×
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