はじめてのプリクラ(べより編)


学校も終わりさっさと帰ろうと
校門まで歩いていた時に悲劇は起きた。
「おい」
帰ってゆっくりしようと思っていたのに。
私の目の前には(一応)彼氏である
ここら辺では知らない奴はいないと言える男
跡部景吾が立ちはだかった。
「…何、邪魔。」
「プリクラとやらを撮りに行くぞ。」
「はぁ?」
何を言っているんだこの男は。
「忍足にまだ撮ってないのかって言われたからな
恋人たちは撮ってるみてえじゃねえか」
「まあほぼ撮ってるらしいね興味ないけど」
「だから今から撮りにいくぞ」
そんなに得意げにされても困るし私は帰りたい。
…付き合っているのだから跡部の事はたしかに好きだ。
自信家な所もナルシスト気味なところも。
だが今はそんな事抜きで帰りたい。
何よりも私は眠いんだ。
そのことを伝えると
「移動中寝ればいいだろう?」
ニヤリと嫌な笑みを浮かべ跡部の家の車へ私を押しやり
自分もその後に乗り込む。
頭が追いついていないのか何がどうなって
こうなったのかそればかりを考えていた。
横にいる奴へ目を向ければ何故だか楽しそうに
笑んでいる顔が見られたからなんだかんだで
よしとしてやろう。

  *

目的のゲーセンにつくと跡部は私の手を取って
プリクラがあろうである場所にずんずんと
歩いて行った。足の長さの違い考えろ。
「より、」
「…何よ。」
「どの機械がいいんだ?」
「…はい?」
「だから、お前はどの機械が
いいんだ?」
てっきり下調べでもしているものだと
思ってからなんだか力が抜けて笑ってしまった
「何笑ってやがんだ、」
不機嫌そうに眉を寄せて言うものだから
尚更おかしくて笑いながらこれがいいと告げて
中に入る。
「…随分と狭いんだな」
「そりゃそうでしょ、」
そう言いながら私は機械へ100円硬貨を四枚入れた
こいつが硬貨なんて持ってるはずがない。
するとおきまりの若い子の声。
コースだのなんだのを適当にぽちぽちと押して決めていく
「手馴れてるんだな」
「まあ、あのカスえると撮ったりするしね」
「…あのうるさい幸村の彼女だったか、」
「そ、そいつ。あ、ほらはじまる。あそこのカメラ見てね」
くだらないポーズを指定する画面を無視してピースを向け
少しだけ口角をあげてみる。
フラッシュが光り画面には(こんなふうに撮れたよ)と
私たちが映っていた。
…跡部がどんなポーズを撮っていたのか。
撮る前に指定してくるポーズと同じものをしていた、
様になっているのがむかつく。
次々に撮られ抱き着かれたり手を握られたり。
眼鏡を取られた。それを跡部がかけて撮ったりも。
次でラスト、どうしようかと少し考えると
跡部がトンっと私の顎に手をやる、
まずい、と思った時にはすでに遅く。
跡部の整った顔が私の顔のすぐ近くにあった。
薄く開かれた青い瞳は私に目を閉じろと言ってる様で。

機械のカウントが始まる。
3.2.1...
私は目を瞑った。

  *

「ありえない。」
できあがったプリクラを見て赤面。
横には満足そうな顔のわが校の王様。
私と跡部の手にあるプリクラの中心には
あの時のちゅープリが。
「なにしてくれてんのほんと」
「アーン?嫌なら拒否はできただろうが」
「ぐ、」
「素直じゃねえなお前も」
「うるさい。」
「そんなお前が俺様は好きなんだがな」

優しい笑顔でそんな事いうな馬鹿。


何時か離れる時がくるかもしれない
お互いにそれをわかっている。
だから「今」の思い出を何かの形で
残していけたら。

なんて跡部には言ってやらないけど。

        -fin-


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