もう一つの物語(↑続編/死ねた注意)


激しい頭の痛みと吐き気襲われて俺は目覚めた
隣には微動だにしないロゼ
最悪の事態が俺の脳内に響く。

「…逝き、損ねた?」

まさか俺だけが。
ロゼは逝けたというのに何故俺だけ。
腹のあたりがもやもやする
ぐっとそれを抑え俺はとっくに冷たくなって
しまっていたロゼに手を伸ばした。
どうして俺だけ生き残ってしまったのだろうが
同じものを入れたワインを同じように飲んだ
というのに。

ねえどうしてかな、ロゼ。
俺一人どうして生きていけばいいのかな。
生きていれば君以上の女性が現れるの?
もし現れてしまえば俺はその人と一緒に過ごすの?
君の事も忘れて俺だけ幸せになれっていうの。
そんな事できる道理がないよね
君なら知ってるでしょ。

ロゼが口を付けたグラスを持ち
片手には俺が口を付けたグラスを持ち
その場に立ちあがる。
両手を僅かに持ち上げ同時に俺の手から解放してやる
グラスは高い音を立てて崩れた。

「こんな風に一緒に壊れるつもりだったのにね」

ばらばらに破片になったグラス。
一番大きな破片を手に取り自分の首に当ててみる
少しくらいは痛い筈なのに痛みを感じない
目を開けないロゼを見て微笑み頭をなでてやる

次こそは俺も一緒に行けるよね

そう云い目を閉じて俺は破片を喉へ突き刺した


はずだったんだ。
何故か目の前には跡部がいて。
その手には俺が握っていた破片があった。
跡部だけじゃない。レギュラーのみんなが俺を見ていた。
泣きそうな目で皆俺を見た。

「ばいばい」

ごめんね。

俺は再度破片を手に取り
もう迷うことなく自分の喉元へ突き刺した。
突き刺してから首が熱くて
皆なんて急いでタオルなんて持ってきて
俺の首へそれを押し付ける。
俺はそれを押しのける。

「俺は。ロゼと、一緒だから」

そう言って部員に笑いかければあいつらは
情けないことに涙をぼろぼろ流していた。

遠くで眠るロゼに手を伸ばすがあと少しのところで
届かない。
いくら手を伸ばしても届くことのない距離は
まるで最初の頃の俺たちの様で
無性に悲しくなって俺も涙を流した

徐々に目の前も霞んでくる。

ロゼ、次はきっと俺も逝けるよ

二度とは逢えない、から
今、もう一度俺の声で伝えたいんだ

「だ、いす、きだよ」

俺はそういったつもりだったけど、
きっと駄目だったんだろうね。
言葉の途中で俺は意識を手放した。




  /.縮まなかった距離
    (遠くの方で泣く声がした)
    (小さく、忘れない。と囁かれた)

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