その涙は

(ユウ越くっつくときの御話)



中二の越野に呼び出された。
とあるジンクスのある場所に。
その場所への呼び出しの目的はただ一つ
「告白」

「なぁ小春…俺どないするべきなんやろな」
「さぁどうやろね。ユウくん越野ちゃんの事好きやないん?」
「ばっ、俺は小春一筋や!」
「…でも、ほんまはちゃうでしょ?よう考えてみ?」
「考える…?」
「越野ちゃんが他の男の子と話ししてたらユウくんどないや?」
「あいつが…?ないない」
「せやったら例えば。これが実現しとったら?」
もしそれが実現したのならば、
俺や小春や彼奴の友人の彼氏以外の男と話ししてたら…?
「…なんや、もやもやする。」
俺がそういえば小春は満足そうに笑んだ。
「今はそれで十分やわ、ユウくん越野ちゃんとこ行ってきいや。」
「小春…、でも、俺は」
「アタシの事はええねんて!気にせんとき。」
「せやけど!」
「男やろ、ユウくん。ビシッと決めてこなアタシユウくん嫌いになるわよ」
母親みたいに笑って俺の背中を叩く小春。
せやから俺は小春が好きや。大好きやねん。


俺は越野に呼び出された場所に
出来る限りの速さで向かった。

  *

指定された時間から大分遅れてしまっていたが
越野はその場所に座り込んで待っていた。
悪いと思い駆け寄ってみればその頬には涙の痕があった。

「…越野、」
「っ、一氏先輩、?」

慌てて目を擦る越野に俺は言う

「こすると目腫れるで、やめときや。」

そういえば大人しく顔から手を離し
俺に向かって頭を下げて

「来てくれて、嬉しいです」

なんてぬかしよった。
俺は時間通りにこんかったんやぞ?
御前の事好きかもわかんらんくて
悩んで。
未だにわからん。

「今日は伝えたい事があって、」

顔をあげて真っ直ぐに俺の目を見る越野。
その眼の強さにドキッとした。
ああ、小春の問いは、こういうコトか。
あのもやもやの正体は、『嫉妬』やったんか
俺は、随分と前から此奴に惚れとったんか
それを小春は気づいてたんやな、流石や。

「待て」

越野が云おうとすることを俺は止める。
奴は泣きそうに顔を歪める。

「柄やないのはわかっとるけどな、
こういうんは男からいうもんやろ。
理解したのはたった今やけど。
…俺は大分前からお前が好きらしいわ。
せやから、…俺と付き合え。」

我ながら酷い告白だ。
もっと別な言い方があるだろうと責めても
撮り返しはつかない。
下げていた目線を越野にやるとそいつは
ボロボロと涙を流していた。

「…何、泣いてんねん」
「一氏先輩、今日エイプリルフールじゃない…」
「しっとるわド阿呆!」
「だって、だって」
「俺が好きいうとんねん黙って受けとッとけ。」
「…はいっ、」

俺は越野に近寄ってしゃがみ込み
越野の泣き顔を隠す様に抱締めてやった。
すると右肩の学ランが濡れた感触がしたが
ま、今くらいはゆるしてやるか、と息を吐き
頭を撫でてやった。


 
 /その涙は.

(これが俺たちのはじまり。)
(俺たちのキューピッドは俺たちの大好きな小春。)




                 -fin-

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