ああ、崩れて行く。
音もなくただ静かに。
好きだとか嫌いだとか、側に居たいだとか離れたいだとか生きているとか死んでいるとか。
白だとか黒だとか赤だとか、青だとか透明だとか有色だとか強いだとか弱いだとか。
二極化された世界は余りにも苦しい。


彼から見ての自分と大衆から見ての己がイコールであるわけはないのに。
回りから訊いた彼と自らが感じた彼はいずれが本物かを考える。
歩み寄る、離れる。離れる、離れる。どうして違う。対比とは何だ。



均等なシーソーゲーム。感情を物質量に換算するなら、きっと自分の方だけ沈んでしまう。



「何故ですか」



賢い彼は知らないと少しだけ笑った。
何かが違う。正当性と矛盾なら何時だって強いのは後者だ。
無知は強い。強いことを自覚しないままのジョーカー。
道化師のからくりに気付いた瞬間に失ってしまうけれど。



「知ってるくせに」



けれど彼は最強のカードを装うことが出来るのだ。
バランスの違う二つの物を対極に置かず、好きなように操って。
空に浮き上がらせることも、地にのめり込ませることも。



「ここまで来て見ろよ仗助」



良く云うよ。
近付かせてくれないのはあんただろう。




バランス




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