気付いていたよ、とっくに。
あんたの肌は白くて、服に隠れているところは勿論、日光に当たっている筈の首筋や掌、頬も雪のようだ。…そういうのは、本来なら女の子に云うべき台詞かもしれないけど、あんたよりも欲しくなる様な女なんていない。鎖骨や太腿の内側に付けるキスマークだってその肌には良く映える。自分が付けた痣を見て、指先で辿るだけで欲情してしまうなんて我ながら滑稽だ。
見える位置に付けるなと云うのは見えない所になら構わないというパラドックス。相変わらず素直じゃない。そういう所も好きだけれど、幾ら俺でもそれくらいは弁えている。まだまだ子供だとあんたは云うけれど、子供というのは時として大人よりも余程賢く狡いんだ。
だから、服で隠れる箇所には数え切れぬほどの沢山の痕を残す。治癒力の高いあんたの肌からはすぐに消えてしまうけれど、それよりも早く刻んでいけばいい。幾つも幾つも。だって俺には、形あるものを残すことはできないから。例えばあんたの左薬指のリングの跡の様に。 色の違う一部分には、俺が離れた瞬間銀色の輪っかが収まるんだろう。あんたと、俺じゃない別の誰かとの愛の証。そんなもの、俺にはない。消えてしまう痕を必死に繋ぐ位しか出来ない。俺の嫉妬の目すら、その誰かが知ることはないんだろう。
嫉妬の目