彼は戦いにおいて冷静で頭も回り、最強のスタンドを持ちながら自分の力を過信する事は無い。行くべき所は行く。引くところは引く。判断は常に完璧だ。



私生活では冒険家として優れた論文を残し、かの有名なSW財団とも懇意でかなりの地位もある。見た目は西洋と東洋の血が混じり見るものを必ず引きつけ、体躯は丸で彫刻のように整っており、正に非の打ち所の無い人間だった。そんな彼に、憧れを抱いたのはなんの不思議もない。寧ろ、憧れるなという方が無理だ。



けれどそれが好意に変わり愛情へと進化していつしか、何よりも深く愛してしまっていた。


「好きです、承太郎さん」


何度この言葉を飲み込んだだろう。伝えるのは簡単だ。しかし、失ってしまえば二度と元に戻せない。無理矢理拾い集めて繋ぎ合わせてもきっと歪んでしまう。愛されたい等と望む気は無かった。ただ、側にいたい。



それに、彼に突きつけられる拒絶よりも、その拒絶を前に打ち拉がれる自分を見る、悲しそうな瞳が想像できて胸が痛かった。伝えるべきじゃない。早く消してしまおう。いや、消せないならせめて閉じ込めて鍵を掛けてしまわなければ。



呼吸をするだけで彼の息遣いを思い、空を見る度に彼の瞳の色が蘇って、煙草を咥える時には彼の香りに触れてしまうこの世界では余りに残酷にも感じられるけれど。



「好き…でした…承太郎さん」



(歪な嘘がふっと宙に溶けていく。せめて、この瞬間には確かな軌跡を)


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