素早く頭の中を巡らせる。
冷蔵庫にはたいしたものは入って無いが、空という訳でもない。
優しい味の、栄養のあるご飯を。コンビニなんかに負けられやしない。
ああ、肉じゃがなら…材料はある。あと、魚もあったから焼いてやろう。それから、それから
「何か食べたい物はあるか?」
「んー。そうだな、可愛いウサギさん」
「ウサギさん?ああ、りんごうさぎな。残念ながらりんごが無いんだよ」
「さっき、コンビニで買ったんだ」
「えっ。コンビニにあるのか?」
「僕も驚いた。ウサギさんにしてくれる?」
「よし、兄ちゃんに任せとけ!宇宙一可愛いウサギさんにしてやる!」
「楽しみにしてるよ。あと、30分で帰るから」
「分かった!」
電話を切り、すぐに風呂を沸かして厨房に走った。
雪男が帰る頃までには流石に無理だが、風呂に入っている間には料理が出来上がるだろう
丁寧に、かつ素早く材料を切っていく。今日は少し薄味に。濃いジャンクフードに胃が疲れてるだろうから
ああそうだ、それから謝らないと。元はといえば(多少の苛立ちはあったにしろ)俺の為に雪男は怒ったんだ。
冷静沈着な画面を引っ剥がせるのは自分だけと思うと、少し優越感にも浸るけれど
それで、ウサギさんを2人で食べて一緒のベッドに入ればいい。
認めたくはないが、この一週間で…普通の高校生男子としては色々ある訳で。…まぁ、それはいいとしても。
帰ってきたら思い切り抱きついてやる。雪男の身体がぐらりと揺れて、それでもちゃんと受け止めてくれて、頭を撫でてくれるだろう。
肉じゃがの火を弱めた所で、聞き慣れたブーツ音がして玄関に走った。
さあ、久々のおかえりと、一度のごめんねと、沢山のキスを。
おわり。
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