「もしもし、兄さん?」


一週間ぶりに聞く、その発音。何だか、とても懐かしいような気がする。
声を聞く限り何処か怪我をして切羽詰まっているとか、喧嘩の怒りをまだ引きずっている様子は無かった


「雪男…何処にいるんだよ」


対照的に、自分は自分で驚くほどに震えていた。携帯を持つ指先までもが震えて、抑え込むようにぎゅっと携帯を耳に押し付ける


「兄さん、どうしたの?」
声の様子に気付いたのか雪男が問う。
どうしたもこうしたも、こっちが聞きたい。何でいつの間にか泣いてるんだ、俺は


「雪男…」
「な、何かあった?」
「馬鹿!早く帰ってこい!兄ちゃん…さっきから…待って…遅いから…お前に…っ…何かあったかと…馬鹿っ…!!!」


もうそれからは滅茶苦茶だった。泣きながら散々叫んだ気がする。主に馬鹿とか心配させんなくそ眼鏡とか、まぁ…我ながら…少し反省


けど雪男は、途中で怒ったり遮ったりしないで聞いていた。多分受話器越しで苦笑いをしてたんだろう
で、全部言い終えて、流石に息切れしてると受話器の向こうでくすくす笑う声が聞こえた


何を笑ってんだ、と涙声のまま聞けば、兄さんがあまりにも興奮してたから、相変わらずだなと思った。だと


「雪男のあほ…」
もう一度繰り返す。雪男は笑ったまま、はいはいと答えた


「…で、今どこにいるんだよ…」

鼻水をかみながら再度問い掛けた。風の音が受話器越しにする。外、なんだろうか

「今さっき任務が終わったから、コンビニでご飯買って帰ろうと思ったんだけどさ」

コツコツと雪男のブーツの足音がする。やっぱり外みたいだ

「コンビニ…」
「で、コンビニ弁当見てたら、急にこんな物食べたくない!って思って。凄く兄さんの料理が食べたくなった」
「…それで?」
「ごめんね、兄さん。僕もあの時疲れてイライラしてたんだ。あんな言い方するべきじゃなかった。…って謝ってご飯を作ってもらおうと思い、電話した」
「…そっか…」
「そしたら、兄さんが泣いた」

再度、くすくす笑う声が聞こえる。

「…っ、うるさい!お前が心配だったんだよ!」
「心配してくれたの?」
「ったり前だ!」
「じゃあ、ご飯作ってくれる?栄養失調で倒れそうだ」
「栄養失調…やっぱりそうか…」
「やっぱり?どういうこと?」
「あ、いや気にするな。で、何が食べたい?」
「何でも良いよ。兄さんの手料理なら」


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