雪男と喧嘩した。
原因は何だったか覚えてない。多分、課題をやってないだとか授業態度がどうだとか、いつもの事だったんだろう
普段なら反省したフリをして大人しく机に座るか、むっと膨れて小さな反論をするか、或いはふて寝するか、のどれかであるのだけれど。
雪男もそれに対してさらに説教するか呆れるか、はぁっと溜め息をつくか、で大概夕食時には仲良くしてるんだけど
些細な喧嘩から発展した冷戦は、今日一週間を突破した
朝、雪男は例のクソ暑くて重たいコートを着てどこかに行った。行き先は知らない。行ってきますもないから、行ってらっしゃいも云わない
最初の何日かこそ、ぴりぴりした空気に戸惑ったが、もう慣れた。話かけるきっかけが無いから話さない。
話さないから余計に溝が濃くなる。だから更に口を噤む悪循環
まぁ雪男の事だから、ごめんって謝れば嫌みの1つ2つは云っても、直ぐに笑ってくれるんだろう。
「そうやって素直に謝ればいいんだよ。馬鹿な兄さん」とか
ただ妙な意地がそれを阻む。双子だから、向こうも多分そうだろう。それか、俺なんかいなくても雪男にはなんの支障も無いのかもしれない
そう思うと、何だか無性にイライラした。
あいつに取って俺は何だ。…なんて、恋愛真っ盛りの女子高生みたいなことが浮かんでくる
「くそ眼鏡」
空っぽの机に悪態を吐いた。しかし静まりきった部屋には何の変化もない。時計の針だけがかちかち進む
雪男は今晩帰ってくるのか?と、ふと思った
任務に行けば泊まりがけというのも珍しくない。泊まりがけなら流石に一言くらい残していくだろうけど。冷戦一週間記念だし、自信はない
「とりあえず飯でも食うか」
喧嘩はしてても、一日中誰とも喋らなくても、恋人に見捨てられたとしても、時間がたてば腹は減る。何か作るか、と俺は厨房に向かった
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