大人の約束





「兄さん、どうしたの?」
「別にぃ」
「雨が降ってるから具合悪い?」
「そんなんじゃねーよ」
「とうさんの事でも思い出した?」
「……さぁな」
「そんな顔しないでよ」
「何がだ」
「凄く寂しそうな顔してる」
「…るせぇよ」
「そういえば、兄さん覚えてる?」
「何を?」
「昔、こんな雨の日に僕にプロポーズしてくれたの」
「プロ…ポーズ?」
「そう。小さい頃、僕がイジメられてずぶ濡れで帰ってさ」
「………」
「イジメっ子の所に行こうとする兄さんを、僕が引き止めて。…あの時はイジメられたことよりも、兄さんが側にいないことの方が何倍も嫌だったな」
「あ〜…」
「だから、不安で必死に引き止める僕に、ずっと一緒にいてやるからって。それで大人になったら、お嫁さんになれって云ったの」
「…そうだったかな」
「覚えてるでしょ?」
「さぁな」
「素直じゃないなぁ。ねぇ兄さん」
「何だよ」
「僕のお嫁さんになってくれる?」
「……はぁ?」
「昔兄さんがしてくれたように、今度は僕が兄さんを守るから」
「…お前、たく…ガキの頃の話をいつまでも」
「傷つくのも寂しいのも痛いのも苦しいのも、全てから僕が兄さんを守るので、僕のお嫁さんになって下さい」
「…お前なぁ…」
「強くなったんだ。僕は」
「それは、知ってる」
「僕が、兄さんを幸せにするから」
「よくそんなこっ恥ずかしいセリフをさらさらと云えるな」
「本気だよ」
「…それも知ってる」
「ずっと一緒にいてくれる?」
「…まぁ、幸せにしてやるって約束だしな」
「兄さんは昔から僕との約束を破ったことないもんね」
「兄ちゃんだからな」
「たった数時間じゃない」
「それでも兄ちゃんだ。兄ちゃんが、弟との約束破ったり嘘ついたりするはずねぇだろ」
「うん」
「ずっと一緒な」
「絶対だからね」
「馬鹿だな雪男は。俺が雪男とバイバイする訳ないだろ」
「…ちゃんと覚えてるじゃない」
「忘れたとは云ってねーよ」
「もう。…あ、雨止んだみたいだよ。一緒に晩ご飯の買い物行こうか」
「そっか…そうだな。何が食べたい?」
「久しぶりに兄さんのすき焼きがいいな」
「任せとけ。兄ちゃんがとびっきり旨いの作ってやるよ!」




大人になってからの確かな約束
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