2012/12/03 23:04

仗&承
行かなくちゃ。この腕を振り切って、違う場所に。俺はこの人を苦しめたい訳じゃない。だから、一緒に居てはいけないのだ。泡沫の恋は、過ぎ去る季節と共に葬ってしまわないと。…蝉の声はもう、終わる。紅い紅葉は間もなく咲いてしまう。そして、彼は。もうすぐ、俺を置いていく。

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仗&承
強く抱きすぎて骨が軋んだ。声は出さぬまま、ひたすら唇で愛を重ね合っていく。じんと痺れた脳内は着実に甘く溶けて思考を奪った。この瞬間、最も生を感じながらこのまま朽ち果ててしまいたいとも思う。「仗助、」「承太郎さん」ほぼ同時に愛しい名を呼んだ。

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仗&承
積み上げられた白い吸い殻は丸で亡骸のようで、己の姿とも重なる。遥か海の向こう、少年が与えてくれた愛のストックはもう疾うに尽きた。細胞が乾き、ただ飢餓が続いていく。愛か、自己満足か。冷え切った部屋の中、横たわったベッドは余りにも広すぎる。

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仗&承
沢山の約束を積み重ねて、一つずつ消化して来た。叶わない事を幾度も2人で叶えた、だなんて夢物語のようだ。けれども。「ずっと一緒にいましょうね」初めから言い続けたそれに、彼が頷いたことはない。今も、また。「律儀ですねぇ」ふっと苦笑いが漏れる。約束は何時だって破られない。

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仗&承
どうしたって俺らは違う人間同士で、完璧に溶け合う事など出来なかった。僅かな隙間がもどかしくてがむしゃらに抱き合っても、離れる時はたった一瞬なのだ。早朝、窓の外が白む度に厭な物がじわりと身体を浸食していく。何度手に入れても、それと同じ数だけ手放さねばならないなんて、余りにも。




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