2012/10/31 23:24

(仗&承)
朧気な瞳から溢れた涙に唇を寄せる。舌先に伝わったしょっぱさは、彼の悲しみを凝集している様で胸が疼いた。「…俺が、居ますから」ありふれたそんな言葉すら微かに震えていて、抱き寄せようとした腕も巧く動かない。「…承太郎さん」彼は俯いたまま、ぎこちなく息をする。

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(仗&承)
水中を優雅に泳ぐ魚に承太郎さんは釘付けで、その横顔は普段の精悍な物とは違った。彼の脳内は今、穏やかな水の震動と、自由に動く魚達に占拠されているのだろう。呼吸さえ潜め、もしかすると共に遊泳しているのか。安らぎを遮るのは忍びなく、青い光の反射する横顔に口付け静かに身体を寄せた。

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(仗&承)
静まらぬ動悸を無理矢理に抑え込み、乾いた唇を舌先で湿す。圧倒的な美を食い入る様に見つめた。「仗助、あまり見るな」微細な月光が浮き立たせる彼の輪郭。どうして視線を逸らせようか。緩慢に延ばした腕は無意識に震えていて。やっと触れた肌は、ほんのりと暖かかった。

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(仗&承)
どうしたって今俺は幸福でしか無い。漸く彼を手に入れたのだから。叶うなら、その美しい瞳に映るのが、優しい物だけで有って欲しい。そしてほんの僅かで良い。俺の姿を留めて欲しい。彼の中で、俺が息づく事が出来るなら。

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(仗&承)
膝を抱き抱え、何時鳴るのか分からないチャイムに耳を澄ます。彼が戻る場所などきっと沢山有って、此処は不必要なのかもしれない。俺自身にも意味など無いのかもしれない。それでも、もし彼の欲する物が僅かにでも有るのならと、部屋を空になど出来なかった。ただ、彼を待った

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(仗&承)
部屋の扉を開けるとひやりとした空気が流れて思わず身震いする。普段迎えてくれる人は出張中で暫く戻らない。家中の灯りとテレビをつけて、ソファーに座った。こんなにも、薄ら寒い物で有るとは。ただ此処に彼が居ないだけで、全てが死んでしまっている。

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(仗&承)
血筋の証明である星形を指先で辿る。己の痣と寸分違わぬそれを見る度、承太郎との繋がりを感じ安堵した。狂おしい程の愛を抱いて居ても、自分達の間柄は余りにも不安定なのだ。「…」そっと口付けを落とす。数え切れぬ程に触れた唇の意味を、彼は何処まで知っているのだろう。

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(仗&承)
唇を噛んで脳内から不要な物を淘汰する。向かい合う人物に曖昧な答えなど通用しない。絡まる視線はいっそ睨み合いと称しても過言では無い程で。「無理だ」明瞭な一言がシンプルに全身を覆ったが引くこと等出来なかった。「いいや、俺があんたを守ります」希望なんて生温い物じゃなく、これは宣言だ。
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(仗&承)
あの両足を切り落とせたなら彼を何処へもやらずに済んだのに。小さな家と其処から見える海が有ったなら良かった。けれど耐えられない。あの美しい顔が刹那でも歪む事が、己には。そして幾ら治せると云えども違うのだ。彼が刻んできた歴史に、どれ程優秀なスタンドで有ろうとも並べる筈はない。

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(仗&承)
愛を囁く。限りなく溢れるそれを、ただ吐き出す。彼の中にある時に、流されて仕舞わぬようひっきりなしに。「愛してます」そんな、陳腐な言葉を何度も何度もぶつけて、強く掻き抱く。例え俺の声が届かずとも、いつかこの体温を想い出してくれたなら。どれほど残酷な事だとしても、この一瞬を刻みたい。
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(仗&承)
いっそこのやり場の無い激動でもって殺してやりたい。全ての狂おしい感情は、彼が居なければ何物にも成り得なかったのだから。胸を焦がすのは何時だって愛情だけれど、容量が余りに多すぎて処理が出来ない。このままでは己が死んでしまう。彼を独り遺す事など有ってはならないのに。

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(DIO&承)
「お前の血は旨そうだ」吸血鬼が舌なめずりをし謳う様に囁く。気を緩めれば一瞬で食い殺されそうな距離。だが畏怖は無かった。どうせこの化け物に己を殺せやしない。「死んだら終わりだぜ、人間は」お前が一番良く知っているだろうと皮肉混じりに告げてやれば、高らかな笑い声が部屋に満ちた。





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