2012/10/31 17:46

『四次元ポケットが欲しいぃい!!』
受話器の向こうから響いた絶叫が耳に突き刺さり、軽い頭痛を覚えて顔を歪めた。いきなりデカい声を出すな、と怒ってはみたけれど、だって!とまた悲鳴じみた声が返ってくる。
『だって四次元ポケットがあれば、どこでもドアで今すぐにでも承太郎さんに会えるんっすよ!素晴らしくないっすか!?』
『明後日には会えるだろ』
『今すぐ会いたいんです!俺は!大体承太郎さんはドライすぎるんっすよ!俺がいったいどれだけ…』
力説を適当に聞き流しながらカレンダーに目をやれば、日本を経って今日で丁度一週間。成る程、仗助が煩くなる訳だ。
明日は最終的な報告をチェックせねばならないから、そろそろ荷物を纏めておかなければならない。財団への調査書の提出もあるし海水のサンプルを幾つか…
『聞いてますか?!』
『聞いてる』
『絶対嘘!今の声は上の空だった!』
間髪入れずにツッコまれ、どうしてこんな時は鋭いのかと苦笑いが漏れる。そしてそんな心情を読んだかのように
『俺は承太郎さんのことなら何でも判るんですから!』
などと抜かすから、すまんと素直に謝った。
『もー、どこでもドア欲しい…ほんと欲しい…絶対便利なのに何で誰も開発しないんっすか…』
『さぁな』
『会いたいなー…承太郎さーん…』
段々と勢いの無くなる仗助をどうにか宥め、通話を切る。
騒がしい声が無くなると急に部屋が静かになったようで、どうも落ち着かない。
「どこでもドア、ねぇ…」
ぽつりと漏れた呟きにも当然反応は無くて、確かに少し仗助の気持ちが分かったような気がする。せめて早めの便に乗るか、と立ち上がり準備を始めた。

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