2012/10/17 00:37

「承太郎さん。俺って必要?」
久しぶりの休日。揃って朝食を取りつつ新聞を広げる承太郎さんに問うた。ぱらり、と紙の捲れる音がして、目線は活字を追ったまま「必要だ」と返って来る。
「ほんと?」
「こんな下らん事で嘘を吐くか」
湯気の立つマグカップが彼の口元に運ばれ、掛けられたら吐息で温度を奪われていく。
「下らないって酷くないっすか」
軽く睨んでも、未だ視線を貰えない。
きっとあの精巧な脳内には沢山の情報が交差しているんだろうと諦め、食パンをかじった。そのまま無言で食事が進む。時折ぱらりと新聞の音だけが響きながら。

食べ終えて食器を洗っていると、急に後ろから抱きつかれた。気配など全く感じていなかった俺は、思わず皿を取り落とす。割れた。
「あ、皿が…」
欠片を拾い上げようとする俺の身体をぎゅっと固める物だから、身動き出来ない。
「承太、」
「お前が必要かなんて下らない事を聞くな。お前が居るから、俺はこうして此処に居る。お前が居ないなら、俺の生きる意味なんざねぇよ」
淡々とそれだけ告げられると腕の戒めが解かれた。振り向いた時にはもう承太郎さんはソファーで寛いで居て。時を止めたのかもしれない。
「あんたならそう云ってくれると思ってました」
「…ふん。皿は直しとけよ」
「はい!」
帽子を深く被り、先程読み終えたはずの新聞をまた開いているのは微かに染まった頬を隠すためだろう。笑いそうになるのを堪えつつ、俺はスタンドを呼び出した。


comment (0)



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -