2012/08/20 11:14

「承太郎さん、満員電車乗ったことある?」
お盆の帰省ラッシュを見ながらふと問い掛けてみた。
「無い」予想通りの即答。
「乗ったら死にそうですもんね」
俺は全く気にしないが、承太郎さんは人混みが苦手だ。沢山人が居るとまず近付かない。夏祭りの時は相当不機嫌になって宥めるのが大変だった。
その割にいざ花火なんかが上がるとすーぐ夢中になるんだけど。
「満員電車に乗るくらいなら俺は外に出んぞ」
「うわぁ、ワガママ」
彼らしいと言うか何というか。うん、可愛いけどさ。
「ちゃんと俺がガードしてあげますから大丈夫ですって」
「お前は…わざとらしくくっついてきそうだから嫌だ」
「人が親切に云ってるのに!」
眉を寄せながら睨みつつ、ふと狭い電車に乗る承太郎さんを想像してみた。周りには沢山の人、否応無しに押し付けられる身体、何処か苦しげな表情、耳の位置で掛かる吐息。
………これは中々と。
「仗助?」
「承太郎さん、痴漢ごっこやってみません?」
「…は?」
「密着した状態で周りには人が居るしそもそも電車走行中だから逃げられない!最初は嫌がってるのに徐々に感じてくる承太郎さん!でもバレちゃいけないから声は出せない!その間にも身体は熱く…グレート!」
「………」
「やべぇ超やべぇ!行きましょう承太郎さん!承太郎さ…ぐはぁっ…!」
案の定というか自業自得というか、とっても素敵なオラァッがボディに叩き込まれた。当然目が笑っていない。冗談だと必死に弁解するも、ラッシュは暫く止むことがなかった。



…夏バテとは無縁で何より。
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