2012/03/15 01:00

朝は機嫌の良かった空が、今はしとしとと泣いている。そう云えば天気予報のお姉さんが昼からは雨だと云っていた様な気がするが、10分程寝坊したお陰で仗助はまともに聞いていなかった。
「サイアク…」
今日に限って小テストの結果が散々だとかで、放課後職員室に呼び出された為、友人達は皆帰ってしまったらしい。再度教員の元を訪ねれば学校用の傘は貸してもらえるだろうが、デカデカと学校名がマジックで書いてあるビニール傘など使いたくはない。
どうしようと溜め息を漏らしながら、下駄箱まで向かう。窓から見える外は薄暗く、晴れる望はほぼないと容易に知れた。
これが普通の日なら良い。鞄で雨を遮りながら走れば何とかなる。多少不本意だが、髪型は家でゆっくり整えれば問題はない。ただ今日に限っては、そうも行かない。
「承太郎さん帰ってるだろうしなぁ」
学会の集まりがあるからと一週間前にホテルを出て行った彼が、今日の昼前にはホテルに戻るのだ。学校が終わったらすぐに行きます!と半ば無理矢理約束していた。忌々しい呼び出しなどなければとっくに部屋の中に居たはずだ。いや、ベッドの中かも知れない。叶うなら後者でありたい。「早く会いてぇのに…」
本音を漏らし、再度天を見上げる。まさか濡れ鼠でそれなりに高級なホテルのフロントを抜け、スウィートルームに行く勇気はないし家に傘を取りに戻れば益々遅くなる。

―――さて、どうした物か。

暫し考えて、仗助はそのまま向かうことにした。どちらも不都合なのだから、せめて一秒でも長く一緒に居たい。
「うっし!」
一人気合いを入れ、意を決して靴を履き替える。上着を脱いで鞄に掛け頭に被せた。…心許ないが無いよりマシだ。
バシャバシャと水溜まりを跳ねさせながら雨の下を駆け抜け、校門を出たとき、ふと見慣れた車に気付いた。真っ白で四角い車。仗助の目が大きく見開く。これは、この車は。まさか
「随分遅かったな、仗助」
聞き慣れた凛々しい声の方に視線を向けると、愛しい人の姿があった。

□□□□□□□
あれ、長い…続く。
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