2012/05/31 22:59
彼は良く笑うようになった。昔良くしていたように、口端を吊り上げるニヒルな笑みでは無く、とても柔らかな表情で。涼やかな声で名を呼ばれると早くなる俺の鼓動は、ちっとも変わらないというのに。積もった感情を上手く伝える前に、また新たな愛が積み重なっていく。この瞬間にさえ。「承太郎さん、好き」「知ってるさ」照れもせず答えてくれるようになったのは何時からだったか。そして、返事の代わりにキスをくれるようになったのは?「なら大好き」手に入れたもの、失ったもの、切り捨てたもの、拾い上げたもの。全てが混じり合ったこの10年間、気付けば常に俺の中心には彼が居た。