2012/05/20 16:56

キーボードを叩きながら承太郎さんが何かを口ずさんでいた。目を閉じて耳を澄ましてみる。聴いたことのある音程。アップテンポなリズム。脳内に蘇ったのは騒がしいロック。ああそうだこれは。「覚えちゃったんですか、その歌」「あれだけ毎日聞かされりゃあな」俺の車で延々とリピートされる古いシングル。ひたすらその一曲だけ。「気に入っちゃいました?」「全然。騒音にしか聴こえねぇ」「じゃあ何で口ずさむんですか」「頭について離れない」承太郎さんの鼻歌なんて本当にレアだ。しかも大して好きでも無い歌を。何か、こういうのって。「可愛いなぁ」そう呟いた俺の頭を間髪入れず軽く小突くと、承太郎さんは再び歌い始めた。ああ、キスが出来ないのは残念だけれど、もう少しだけ聴いていようか。
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テーマ「推しとの恋」
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