2012/04/22 15:37

学生の頃、ジャケ買いしたアルバム。名も知らぬロックグループが歌う賑やかな曲の10番目。何故かその歌はギターのみで、他の曲からは想像も出来ぬほど物悲しいメロディーだった。英語の歌詞など理解出来なかったけれど、囁くような儚い歌を何度も聴いた。良い曲ですからと、自分の物ではない車の中のCDデッキに入れっぱなしにして彼にも聴かせた。彼は他にCDを持って無かったから、その曲ばかりになった。そして最後のデートの時にも、ずっと流れていた。「これはお前のだ」何度目かのリピートが終わった時、唐突にデッキから取り出され返された丸い円盤。途切れたミュージック。静寂に包まれる車内。久しぶりに見る、英字体のレーベル。「良い曲だった」その言葉は過去形で、二度とこの曲を2人で聴くことは無いのだと気付く。「たまには思い出して下さい」そう云うと承太郎さんは優しく笑って「ああ」と頷いた。「俺も聴きますよ」俺は最初で最後の嘘を吐き車を下りて、未だ歌手名も曲名も判らないCDを割った。
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