ゲスゲスしてる。 控えめだけど居ることを知っているかのようにまたノックをしてくる音。 「嘉禄?居るんでしょ?」 …その声。咄嗟に私の口を掌で塞ぐ嘉禄は外の女の子を見透かすような目を向けて様子を窺っているようにも見える。 「まさかこのタイミングで…」 『…?』 独り言のようにぼやく嘉禄の行動は予測できない。だけど意味深に笑うと耳元に顔を寄せてきた、よりも先に未だに冷たい手が腰のあたりを弄る感触に粟立った。 『な…』 「此処、壁が薄いんだ」 (え…?) 突拍子のない言葉の意味を理解することになるのは当たりがいい体位にされてからだった。理解した私を見定めたと同時に圧し掛かる感覚に背筋が強ばって咄嗟に口を覆った。 「嘉禄…?」 「…居るよ、エリシュカ」 この状況にも関わらず向こう側へ居るエリシュカという女の子へ返答をする。短い会話が続く中でも嘉禄は器用に私を弄んでいる。 今にも声が漏れそうなのに覆っていた手を掴まれて口を覆われた。 『…っ、んぁっ、ぁっ』 隙間から抑えきれない声が小さく漏れるこれも外の彼女に聞こえていないか気が気じゃない。もしかして耳を澄ませて中の様子を窺っているんじゃないか、とか。 実際ベッドの軋む音は多分…聞こえてると思う。 「嘉禄…?誰か、居るの?」 (!) 「…まだ居たの?」 「だって、私嘉禄に会いたいんだもん…!ねぇ嘉禄、今日のディナーは一緒に食べれるでしょ?」 「…そうだね。じゃあエリシュカ、」 え…? 「先に…行ってて」 『…っ!や、…ぁっ』 「うん…分かった」 壁越しに約束ね、そんな吹っ切れたような声が聞こえて小さな足音が遠退く。けどさっきの言葉はエリシュカちゃんへ向けてでもあるけど 『や、嘉…禄…っ!』 「…やっと名前で呼んでくれたね」 『ちが、ぁっ…ぁあんっ…!アッ、イ…』 おでこにキスされた矢先に容赦なしに突かれて部屋中に自分の喘ぎ声が響く嫌悪感。呆気なくイカされたことにさっきの言葉の矛先は確実に私だったことを思い知らされた。 『……』 ちょっと、まって…? 「…どうかした?」 『嘘、でしょ…?』 緩く微笑む嘉禄の顔を勢いよく引っ叩いた。引き抜かれたそこから滴る感触に血の気が退いた。 「痛いな…そんなに驚くこと?」 『何、考えてんの…?』 「…今日はもういいよ。蒼は神経質になってるだけだよ。 あぁ、大丈夫だとは思うけど不安なら部屋にある小瓶を飲めばいいよ」 *** 『ハァッ…っ、ぅうっ…!』 身肌蹴たまま部屋まで走った。壊れるような音を立てて扉を閉めた途端一気に涙が溢れて止まってくれない。 ずるっと座り込むも走ってる間にも流れ落ちる感覚はあった。嘉禄の言う小瓶は鏡台の前に待ち構えているように佇んでいて気付いたら鏡台含めてそこにあるものを全部なぎ倒してた。 なのに気持ちは全然収まってくれない。どうしようもできないこの気持ちはどうしたらいいの? Psychedelic |