予想はしてたけどやっぱり流れに逆らうどころかさっきのあの目と合ってから思うように力が入ってくれない。 无が嘉禄と言っていたあの“嘉禄”のこと、今になってみんなの顔が浮かんでは消えて、それだけ恋しくて寂しい。そんな思考を蹴散らす目の前の嘉禄に今にも漏れ出そうな声を必死に噛み殺してる。 「…そんなに声、出したくないの？」 こんな風に目をつり上げて見据えてる私にめげることを知らない嘉禄は優しく声をかけてくる。声を出させようと躍起になるわけでもなく、そんな私を楽しんでいるようにも見えるけど顔が耳元に寄せられた時には違う感触がその辺りを駆け巡った。 『…や…っ！ぁ、んぅ…っ！』 項の辺りを執拗に舐め回しながら太腿の裏を持ち上げられたと思う矢先にずらされたそこから指を入れられた。 逆らおうと口を開くのを見透かすように口を覆われてされるがままだった。舌も執拗に絡ませようとしてくるし指の動きも止む気配がない。わざとポイントを外しながら焦らしている気もして、だから余計に焦りもあった。 『っ！』 「どうしたの？」 じゃ、ねーよ。なんて本音は言える状況じゃない。一気に指の付け根まで入れられた感覚と思いっきり曲げられたせいでもう声を抑えられなかった。 『…んぁっ、やめ…っ…ク、』 「え？」 『んっ…っ…イ…っ』 もう頭が朦朧として意味が分かんない。ただこの快楽とは認めたくない感覚から早く逃げたくて仕方がなかった。息をする度に声も混じって視界も揺らぐ私を満足そうな眼差しで見下ろす嘉禄が辛うじて判断できるくらい。 「顔隠して…恥ずかしいの？」 『…んんっ…ぁっ、もう…や、だ…！』 「それとも、」 『ぁっ…！んぁあっ、やっ…っ、アッ…んんっ―！』 「…イキたかった？」 ずるっと指を引き抜かれたけど嫌な違和感がその前に駆け巡っていた。嘉禄は何の変哲もない風に装っているけどシーツのシミが目に飛び込んで一気に血の気が退いた。 「…蒼は俺のことだけ考えればいいんだよ」 そう言いながら未だに意識が朦朧としてる私に覆い被さって、胸元にキスしてきた。もう身体的に限界なのにそのまま挿れようと当てがわれることで一気に目が覚めた。 「ちゃんと…もっと感じて？」 首を横に振っても圧迫感は増して避ける術はなくて、早く終わってほしいただそれだけなのにされるがまま弄ばれるだけだった。 体位を変えられて喘ぎ疲れていると言っても過言じゃない私の背中に舌を這わしたその時扉をノックする音に心臓が大きく跳ねた。 （だ、れ…？） もしかして白黒とも思ったけど声の主はあどけない女の子の声。そっと窺い見れば嘉禄にしては珍しいというか、少し怪訝な面持ちになっていた。 当然止めてくれるものだと思った。 油断していた私へ更に密着させる嘉録に目を見開けばいつもの眼差しで返されるだけだった。 Psychedelic |