『もう…』
「ん…?」
『もう、やめて』

思考がぐちゃぐちゃで何が正しくて間違いなのかもう分からない。でも今の心情は過去にない歪なものになっているのは確か。
意図することも曖昧なまま抱かれることもみんなに優しくしてもらうことでさえ辛い。


「蒼」
『…平門、もう「お前は逃げたいのか?」…え?』
「與儀や无、ツクモが居るこの艇から逃げたいのか?」

意表をつく言葉に言葉が詰まった。だけど、そんなんじゃない。首を横に振る私を優しく撫でてくる、そっちの方が辛い。

「與儀やツクモ、イヴァ…みんなもっと頼ってほしいと思っている」
『分かってる…っ、けど』
「一番辛い、逃げたくて仕方が無いお前の手を、」

…?

『え…』
「掴んで離したくないのは俺の方だ」

掴まれた手。それを自分の顔に触れさせる平門の言動と眼差しから逃げたいはずなのに何故か背くことができない。

まるで壊れ物を扱うような手つきに胸が痛くなる。


『平、門…?』
「蒼…俺はお前に対する情を隠してきたつもりだ」
『え…?』
「貳號艇に対する愛情とは異なる情…だが言葉にしたら俺の感情が暴走すると知っていたからだ」
『意味、わかんない…』

なんかすごく回りくどいというか、でもわからない方がいいことくらい平門の顔を見れば嫌でも分かる。案の定、わからないでいいと言われたくらいだ。


「もう気付いてるだろう」
『……』
「今は黙秘してくれて構わない。俺はその言葉はこの先も口にはしないつもりだ」
『平門、それって…?』

言葉を遮るように指で制されてしまったけど、多分思っていることで粗方合っているんだと思う。それでも、


「…困惑させてしまったな」
『……してないから』
「そうか。ただ言えることがあるとしたら」
『…?』

…え、


『やっ…ちょ、何…っ!』
「…こうやってお前の存在を確かめていることだ」
『って…!まだ…ぁっ、や…ぁあんっ!』
「奥…好きだろう?」
『…っ!…んぁっ、やっ…そこ…っ、やめっ…や、だ…っ』

何をするかと思えばまだ続ける気らしく思いっきり奥を突かれた。
底無しなんて思うのもほんの一瞬で背筋が波打ちながら突かれる度に我慢できなかった声がだだ漏れてしまう。


「嫌ならいつものようにもっと抵抗してみろ」

言えるならとっくに言ってる。だけど反論したところで出る声なんて決まってる。


されるがまま、それは変わらないけど最後まで気付くことはなかった。抱かれている間平門はずっと、私の手を自分の胸に押し当てていたこと。

…無論、意図的なのか無意識なのかということも。


Psychedelic
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