『もう、いい加減にしてよ…』
「いい加減、か」
『何になるの…?』

何かあると決まってこういう風に流して、流されて一体何がしたいの?


『サンプルだから、反応を楽しんでるの…?』

自分で言っておきながら胸が苦しくなった。その言葉は人としてみられていないような気がしていたし言ってしまえば生死どころかいいように使われて、捨てられる所謂マウスのようなもの、でしょ…?


『だったら早…―っ!』
「…殺してほしいのか?」

平門の目が一気に温度を失った。むしろこれは平門なりの怒りの表れなんだとしたらとんでもないことをしてしまった、そう思わせるくらい戦慄した。


「それとも使うだけ使って捨てるとでも?」
『実際、そうなんでしょ…?』
「言ったはずだ。あれは建前であって本質とはかけ離れていると…第一、」

え…?


「出来心だけで煩悩を満たすなんてことはしない…蒼に限っての話なら尚更」
『意味わかんない…―っ!』
「…蒼だから満たせるものもあるわけだが、それこそ出来心という単純なものではないな。…分かるだろう?」
『そんな勝手…んぅ、…っ!』

耳元で本当に舐めてくるようなトーンにゾクっとした。それは聴覚よりも片脚を持ち上げられたことでまた焦りにも似た嫌な感覚。


「ホラ、力を抜け」
『…っ』
「やれやれ…仕方ないな…」
『何言っ…んっ…んんっ―!』

眼鏡を外す動作に目を奪われた矢先に一瞬だけ伏し目になっていた平門と目が絡んだ。
やばい、そう思う前に一気に口を覆われて下も勢いで捻じ込まれた。
舌も執拗に絡ませるせいで満足に呼吸もできなくて時々漏れるのはキスの隙間からの喘ぎ交じりの自分の吐息。

離れれば出てくるのは本格的な自分のそういう声だけだった。


「やらしいな、お前の声は」
『そんなこ…っ、』
「ないって?」
『ぅあっ…!ぁっ、んぁっ、』
「…どこがだろうな」
『っ!ちょ…っ、や、ぁああんっ!ぁっ、ひら…ぁっ、』
「イケるか…?」

何が何だがわからない、けど喘ぎながらも気付いたら平門のその言葉に必死に頷いていた。多分半泣きだったと思う。

不本意だけど気持ちよくてどうしようもないこととか、こんな風に喘ぎまくる自分が嫌で仕方ない。
でも目先の快楽に勝てないあたり出来心はともかく自分の煩悩を満たそうとしているのか、までは流石にわからなかった。


Psychedelic
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