「もうすぐ会えるよ」 『え?』 「もうすぐそこに来てるんだ。俺の信頼してる人がね。だから蒼、安心して委ねるといい」 『どういう「蒼」…?』 「早く、会いたい」 『っ!』 「ここで会うのもあと少し…ちゃんと#触れることができるよ」 『ちょ、』 「蒼をくまなく…隅から隅まで…ね」 『な…に…?』 「だからここで出会ったのは夢でも幻でもないことを置いていくよ」 『は…?』 え、 『やっ…何…っ』 「目、瞑って?」 『だから…っ、』 目を覆われた瞬間その場に押し倒された。だけど衝撃があまり感じられないのはやっぱり夢の中なのかもしれない。 今はどうでもいいいそんな思考の矢先に胸の痣にぬるっとした感触が伝って心臓が変な動きをし始めた。 なんていうか、まるで執拗にそこを舐めて何か目論んでいそうな妙な執着加減にいろんな意味で肌が粟立っていく感覚。抵抗しようと口を開いても出てくるのはそれとは全く別物の上擦った声。 『や…っ、…んぅ!』 「…痛い?」 『っ、ん…やめ…っ、やだっ…』 「…今度会う時は、」 『!』 (あれ…?) ハッとした。見渡したらそこはよく見ている自室のシャンデリア…ということは自力で目を覚ましたことになる。 『…っ?』 胸のあたりに変な違和感を感じて上着を脱いで確認して、戦慄した。 (何、これ…) 胸の痣、だけじゃない。そこに何か、蕾のような新たな痣が絡みついていた。その場所はさっき嘉禄が執拗に舌を這わせていたところ。 (一体何をしたの…?) これはもう夢とはいえない。それと同時に今まで感じたことがないくらいの恐怖に飲み込まれそうになって別の意味で視界がグラつくけど辛うじて持ちこたえている。 もし嘉禄が言ったことが本当ならばすぐそこまで来ている。嘉禄が絶大の信頼を置く男が。 『…痛っ』 チクリと小さな棘に突かれたような刹那的な痛覚は初めてだった。まるでこの痣を締め付ける蕾、それから蔦が締め付けてくるような感覚。 こんな自分が本当に…気持ち悪い。誰とも会いたくない。 この後與儀が夕食を知らせに来てくれた。だけど気分が悪いと嘘を吐いてそのまま部屋に籠ってしまった。 今は誰にも…会いたくない。 …会えない。 Psychedelic |