寝てみるかとは言われてもはいそうでうねなんて言えるわけがない。 むしろそれを一番拒んでいるのは私なのは平門が一番知っているはず。 怖いから拒むんじゃない、だけど彼に会うとどうしても心臓が疼くし触られようものなら焼き付かれるような感覚に陥ること…私のコレを欲しがっていることが、 「怖いのか?嘉禄と会うのが」 『怖いとかじゃないけど』 あの時平門は私が安心して吐き出せるような空気を作ってくれた、だけど実際私は半分も言えてない。 ただ嘉禄という男に会ったこと、いつも夢の中で話すこと、彼の存在だけは明確にしたくらいで私の心臓が欲しいと言われたことや、触れられた瞬間の痛みやキスされたことは口外してない。 それから彼と会うことや話すことが億劫になって、今に至るわけだけど。 「お前は一度ちゃんと身体を休めるべきだ。彼と会うのは抜きにして肉体的にはもう限界を通り越しているはずだ」 『だけど、そんなのできない』 「大丈夫だ」 『他人事だと思って…』 「他人事ならこんな風に関与しない」 確かに平門はいちいち首を突っ込んでは中途半端に関与してくる。しかも私が不快になる手前で引いてくれていることにはなんとなく気付いていた。 駆け引きの案配が憎たらしいくらい巧妙なのだ。 「蒼?」 『イヴァ…』 「イヴァ?」 『呼んでくれたら、寝れる』 気がする。申し訳程度の言葉の繋ぎ方に微かに鼻先で笑う平門はもはや無視。 でも実際、不安で仕方がないのは事実。 だから誰かに傍に居て欲しいと思った。その後すぐにイヴァが来てくれて私の顔を見るなり早く寝なさいとベッドの中に押し込められた。 「やーっと寝る気になったみたいね」 『……』 「どうしたの?」 『イヴァ。手、』 「え?」 『握って…?』 二人の驚きの眼差しを確認したかしないか、そんなタイミングで重さに耐えきれなくなった目蓋を閉じた。 Psychedelic |