今は誰にも会いたくないけど自室へ籠ればまたいつ睡魔が襲ってくれるかわからないから行く場所がない。とりあえず何かしていないと眠いし


『……』
「蒼大丈夫メェ?」
『ヒツジ、ちょっと話し相手になってくれない?』
「…仕事中メェ」
『つれないね』
「仕方ないメェ…」

相手が人間じゃなくても性能のいい機械でもいいから会話をした方が手っ取り早いと思った。なんだかんだ融通をきかせてくれるヒツジを抱き上げてとりあえず場所を移動しようとした時、


「メェ」
『え』

淡い光が浮かび上がったということは誰かが帰ってくるか来客、ということになるけどまさか


「よぉ蒼、久しぶりだな」
『……』

え、朔…?


「なんだぁその顔…まさか忘れちまったか?」
『いえ…』
「ったく相変わらず他人行儀だな」
『まともに話したことないじゃないですか』

あの日平門と話していたのは紛れもないこの人。もちろん顔は知ってるしこのビジュアルは忘れるわけがない。


「じゃあ今からまともに話すってことでいいじゃねぇか。それに話し相手探してたとこなんだろ?」
『え』
「っつーわけだ」
『は』
「どこに行くメェ?」

それはこっちの台詞だ。ヒツジを私の上でから下ろしたと思えばその代わりに私の腕を掴んで抱き上げてきたのだ。所謂お出かけ体勢、というか。


『ちょ、朔…?!』
「ここじゃアレだし折角だ。壱組にも遊びに来な」
『その前に許可が「しーんぱいすんなって!俺を誰だと思ってんだ?艇長だぞ?」…』

分かる。分かるけどコレが艇長だなんて未だに信じられない。


「信じてねぇな」
『いいです別に遊びに行かなくても』
「俺はそのつもりで来たんだよ。平門からも言われてるし?俺が戻るまで話し相手になってやれってな」
『じゃあ尚更…って!』
「ハイハイじゃあ話は向こうでしようぜ。お茶くらい出してやっから!」
『あ…!』


ヒツジの憐みの顔を最後になぜか私、朔に半ば強制的に拉致られ直通で朔の自室と思しき部屋へ身を下ろすことになってしまった。



「ほら、座れって」
『私ヒツジに用事があったんですけど』
「まぁそんな膨れっ面『してないです』…」

別に朔とサシで話すことが嫌なわけじゃない。でもどうしてわざわざ壱組まで来て話す必要があるのか理解し難いし艇長ということは多分平門からも何かしら聞いていると思った。


「気心知れた奴と話したり慣れた場所にいるより慣れてない場所で話した方が緊張するだろ?正直さっきよりは目は冴えてると思うけど?」
『…朔』
「ん?」
『さらっとムカつくんですけどどうしてですかね…』
「オイオイ…それが独り言ならかなりタチ悪いぞ?」
『いいですよ別に』

確かにさっきよりは目は覚めている。それにムカついているのは軽薄な見た目とは裏腹にかなり筋を通した言葉だったりするからだと思う。

平門とは全く別のタイプなのは歴然だけど艇長という役職の理由がなんとなくわかったような気がした。


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