まるで星のように
ヒロト×円堂










「サッカー、やろうぜ!!」
グラウンドに響く元気な声は、雷門中サッカー部を纏めるキャプテン・円堂守のものだ。

その声に応じて、各人から返事が返る。


(やっぱりすごいなぁ、守は)
ボールを抱え、ヒロトはその様子を見る。
雷門中との試合に敗れおひさま園で過ごしていた中、引き抜きたいという電話を受けた後に雷門イレブンへと加入をした。
こうして本当に間近で見ると、彼が本当に皆から愛されているのが分かる。
常に誰かが彼の近くにいて、1人になることはあまりない。
そう考えると、いかにあの時彼と2人きりになれたかが幸運なのかが実感できる。
(まぁ、あのときは皆いっぱいいっぱいだったんだろうけど…て、それは俺達のせいか)





しかし、それにしてもおかしなことだ。
利用しようと…あまつでさえ引き抜こうとしていた人物に逆に魅了され、そうして結局共に居るという結末。
「… 円堂、くん」
呟いて、その名の苦さに顔を歪める。
グランであったなら言えた名前は、こうしてヒロトとなってからは言葉に出せなくなっていた。
『守』
(言えるはずがない、元は敵だった自分がそんな大それたことはできない)
“最強の敵”という所に立っていた自分はその地を降り、今は彼を愛する――――彼に愛される中の1人というカテゴリに入ってからは、他の人と同じ土俵に立つことになった。

「円堂くん、円堂くん……まも、」




「ヒロトー?」
息が、詰まった。
「なぁ、どうしたんだ?ヒロト…具合でも悪いのか?」
いや、どうして、なんで。
「う、ううん。大丈夫だよ、円堂くん。キーパーの練習してたんじゃないの?」
「あぁ、今はリベロ技の練習してたんだ!!…ヒロト、なにか悩んでるなら…遠慮なく言ってくれよ」
いつも大きく輝いている飴色の瞳が伏せられている様は、まるで糾弾されているかのよう。
「悩みなんて、円堂くんと一緒にいて悩むことなんてないよ」
「なら、良いんだ…うん」
納得していないのだろう、それでも深くに入り込もうとしないのは、優しさなのか。
(優しさ、じゃないな。これは守の弱さ…長所にみせかけた、短所)
入り込んでしまうことで生まれてしまう、相手への傷と自分への傷。
それを無意識にか理解している目の前の存在は、すごく小さなものだ。



「じゃあヒロト、オレちょっと秋たちのトコ行ってくるな!!なんかあったら言ってくれ、力になるから」
「うん。円堂くんも頑張ってね」
手を振って見送ると、円堂はすぐさまマネージャー達の所へと走っていく。
そう、彼にとって皆は庇護すべき対象、自らを盾としても守るべき大切な宝物。
(悔しいなぁ、そんなの)
そんなのは嫌だ、自分にとって円堂がかけがえのない存在であると同時に、その逆もあるべきだ。
彼を一番愛しているのは自分であって、例えそれが出逢うのが遅くても気持ちの大きさには関係ない。

(いつか、証明して見せよう。俺がどれだけ守を想っているのか、守に想ってほしいのか
そして、宇宙一のサッカー馬鹿である彼に、宇宙一想われる存在となった暁には。
「君の名前をちゃんと呼べる日が、すぐに来ればいいのになぁ」





宇宙に輝く色
(君自身が、俺にとっての宇宙)







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