白雪姫には永劫の眠りを
吹雪×円堂







強烈な日差しがグラウンドに満遍なく降り注ぐ午後、植えられた街路樹の下で涼む2つの影があった。
「まったく、相変わらず無茶するなぁ…キャプテンは」
「うぅ、ごめんなぁ吹雪。突然倒れちゃって…」
木陰で膝枕をされ、パタパタと扇がれているのはキャプテンである円堂、扇いでいるのは吹雪である。
エイリア学園との戦いの中、今の今まで無茶をし続けたツケが回ってきたのか、突然円堂が倒れた。
本人は練習を続けると言って聞かなかったのだが、それに豪炎寺と鬼道が猛反発。
それに瞳子監督からの鶴の一声もあり、円堂は強制的に休憩を取ることになった。

しかし円堂1人にしてはまた勝手なことをする可能性もある。
だからこそ誰かに見張り―――もとい、介抱をさせる必要があった。
そこでまた誰がその介抱をするか、ということで一悶着あったのだが、そこは同時に疲れの溜まっていた吹雪が担当することとなった。
「吹雪…、オレは大丈夫だから、寝ててもいいんだぞ?皆が心配してたからちゃんと休むし」
「そんな事言わないでよ、キャプテン。…大切な恋人の面倒を看るのは当然のことなんだから」
吹雪が優しく微笑むと同時に、円堂の頬が紅く染まる。
そう、この2人は世の中で言う恋人という関係なのだ。


もはや国の記念物にでも登録されそうな程に鈍感・天然な円堂は、今まで多くの人を惹きつけると同時にその好意に全く気付かなかった。
しかしそんなことは雪原の皇子と称される吹雪には全く関係なかった。
好意をしっかりと円堂に対して示し、オーバーなモーションを繰り返した。
そしてそんな苦労を経てようやく互いの気持ちが互いに伝わり、戦いの中とはいえ2人はささやかながらも甘い時間を過ごすようになる。

「でもさ、お前ずっと具合悪いんだろ?…その、さ。オレ吹雪が倒れるのはいやなんだ!!」
「僕だって同じ気持ちだよ。…だから休みもしっかり取る。ね、僕をもっと頼ってよ」
バンダナが取られたことで露わになっている円堂のおでこを吹雪が撫でる。
常にはない感触と同時に、吹雪の冷たい手によって円堂の背中がぞわぞわと震える。
「…ん、分かったよ。ちゃんと休むからさ、吹雪もちゃんと、休めよ…?」
涼しい風が気分を落ち着けているのだろうか、少しずつ下がってゆく瞼。
もう眠りに入りかけているその顔を、吹雪は愛おしそうに見つめる。



そして、同時に吹雪も相当疲れていたのだろうか。
つい、と円堂は気だるそうに体を持ち上げ―――


「――――――、」
「へへ…っ、まさかこんな感じになっちゃうなんてな」
そこが限界だったのだろう、体から力が抜けて円堂の体は再び吹雪の膝の上へ。
吹雪は呆然として、自分の指で唇に触れる。
先ほど、円堂が重ねた、唇を。


(ずるいよ、キャプテン)
不意打ちながらも、これは2人にとっての、初めてのキス。
「…次は、僕も君もちゃんと起きてるときにやってほしいな―――守」


白雪姫には永劫の眠りを
(夢色のキスで眠らせて)





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