リクエスト9 | ナノ
Even if away





「マーク、ディラン!!久しぶり!!」
その声の主を聞いて、マークとディランはそっと笑んだ。


「Oh,久しぶりだねマモル!!あんまり背は伸びてないみたいだけど」
「う、うっさいな!!これから土門くらいに伸びるんだよ」
「…円堂、それは無いから安心するよ」

そんな3人の掛け合いを、土門とマークは微笑ましく見つめる。
「…随分と、日本で大暴れしてしたみたいじゃないか」
「まあな。おかげでコッチに来るときに一悶着さ」
「マモルは相変わらず人を惹きつけるみたいだな」
そのマークの言葉を聞いて、土門は何となく顔をちらりと見てみる。
声音だけで言うなら穏やかだが、その表情は何とも苦々しげ。
(…どんだけ人を魅了するのかね)
アメリカに留学時代もそうだった。
日本人というだけで最初は舐められたものだったが、いつの間にか輪の中に入り込んで中心的な存在になってしまっていた。



「マーク!!」
そんな土門の回想を余所に、円堂がマークへと飛びつく。
キーパーにしては軽いその肢体を難なく受け止めて互いに笑う。
「やっぱりお転婆は直らなかったみたいだな。どうだった、日本は」
「ああ。色んなヤツにいっぱい会えたぜ!!俺も新しい必殺技とか編み出せたし」
「そうか。それはよかったな」
フワフワと変な空気を2人がまき散らしているせいか、残りの3人は気まずい。
しかもマークは顔がイケメン、円堂は可愛らしい顔立ちだからやけに人目も引く。
「Hey,そろそろ迎えに来てくれるからじゃれ合うのは後にしてくれよ!!」





空港からキャラバンに乗り、合宿場へと着いた円堂はとりあえず自室にいた。
というのも今日はアメリカチームにやって来た3人を歓迎するという名目でパーティーを催すらしく、早速練習すると考えていた円堂は少し不貞腐れていた。
疲れているから、とか時差ボケがあるだろ、とか土門に諭されて部屋に入ったのはいいが、どうも体が疼いている。
パーティーが始まるまで時間はまだたっぷりある。
とりあえず練習用のタイヤでも探してこようとジャージを羽織った時、扉がノックされた。
「?どーぞ」
怪訝に思いながらも入室を許可すると、現れたのはマークだった。



「どうしたんだよ、マーク」
「ドモンからマモルの監視を頼まれたのさ。『どうせタイヤかなんか探しに行こうとするから見張っててくれ』と言われた」
「ゲッ…、マジかよぉ」
ガックリと頭を垂れた円堂の頭をマークはポンポンと撫でる。
「ドモンはお前の事を心配してるんだろ。向こうで随分と無茶もしてたみたいだな」
くしゃくしゃとかき回された髪は所々ハネ気味になってしまっている。
それに加えてこの表情だ、どうしても子犬にしか見えない。



「…お前は変わらないな、マモル」
「なんだよー、マークも俺が身長伸びてないって言うのかー!?」
「まあそれもあるけどな。…正直、変わってなくて安心した」
「マーク」
「もしかしたら、ココにマモルが戻ってくることなんて無いと思ってたんだ」
そう言って、マークは目を閉じる。
思い出すのは日本に帰ると言われたあの日。
―――永遠の別離とさえ錯覚しそうなあの夕暮れ。





「何言ってるんだよ」
沈んでいたマークの心を円堂の言葉が引き上げる。
「俺は、日本にいた時だってマークの事考えてた。今どうしてるんだとか、怪我してないかとか。…ずっと、考えてたんだぞ」
顔を背けて言ってはいるが、その耳は赤いまま。
「まさかマモルがそんな可愛いことを言うとはな。やっぱり全く変わっていないことはないか」
「むぅ。そんなこと言うなら今すぐ日本に帰るからな」
「それだけは本当に止めてくれ」



そっと抱き寄せた体は相変わらず小さいまま。
自分が傍にいない間、色んなものを見て色んなことを知ったのだろう。
「マモル、日本はどうだった?」
「やっぱりよかったぜ。面白い奴も沢山いた。でも、やっぱりマークと一緒にまた戦えることが嬉しい」
「…お前の仲間と戦うんだぞ」
「戦うからって、俺とあいつらの関係が完璧に終わるわけじゃない。逆にあいつらと全力で戦うことができるから俺は嬉しいぜ」
「マモル」
少し離れていた間に、また随分と懐が大きくなったものだ。
それを嬉しくも思うが、それと同時に悲しい。
「また、お前に背中を守ってもらえることになるとはな」
「さっきからそればっかじゃないか、マーク」
「お前は日本の仲間と一緒に慌ただしい日々を過ごしていたらしいが、俺の方は本当に無為だったんだぞ」
よく分からない事件も日本で起きていたみたいだし、とマークが言うと円堂は笑う。
「でもきっとあいつらはきっと世界大会までくる」
どこか確信を持って言い切る円堂を、マークは見つめる。
「あいつらは強い。俺がいなくたって世界にくる実力はある。マーク、俺の仲間は強いんだぜ?」
「それはよく知っているさ。…まぁ、俺にとってはサッカー以外でも負けられないライバルだがな」
「?サッカー以外でも負けられないってなんだ?」
「マモルは気にしなくていいさ。…じゃあ、時間もあるし行くか」
「へ」
「タイヤを探しに行くんだろう?ドモンには内緒で探しに行くぞ」





呆けている円堂を立ち上がらせて、マークは部屋のドアを開ける。
それでも突っ立っている円堂の手を掴み、静かに玄関へと歩いていく。
「マーク…」
「まぁ、デート代わりみたいなものだ。お前が強くなることは俺にとっても喜ばしいしな」
そう言って笑みを向けるマークを見て、円堂はさらに顔を赤らめるが何も言わずについていく。



「―――まぁ、俺だって恋人達の久しぶりの逢瀬を邪魔する程KYじゃないからな」
宿舎の2階、自室からそんな微笑ましい光景を見て土門は笑みを浮かべた。







時間なんて関係ないもの
(距離すらも超越して、僕らは繋がり合う)






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以上まおさまリクエスト『一円orマク円で円堂がアメリカに留学設定』でした。
一円かマク円ということでしたので、ユニコーン戦後ショボーンとしてたマークにしました。
円堂がアメリカに留学→帰国→雷門入りだと物語し矛盾がでますけどそこはスルーで←
しかしこれは今だかつてないほどの糖度…どういうことなの…この甘さ…
そして土門が目立ってしまってすみません。
私が土門好き(書きやすい)せいで一之瀬よりも目立ってしまいました…
こんな駄文で申し訳ない。まおさま、リクエストありがとうございました!!

〜この小説はまおさまのみお持ち帰り可です〜