リクエスト8 | ナノ
!!





統計的には嫉妬深いのは主に女性ということになってはいるが、男性も対して変わらないものではないかとマルコは常々思う。
まぁ、恋をする者全てに言えるものだろうけれど。





「……」
「フィディオ、なんか文句があるなら喋ったらどうだよ」
「そうだよー。黙ってたら何にも分かんないよ」
イタリアエリアにあるカフェ、太陽の光が差し込む窓際でオルフェウスの主要メンバーが練習後のささやかな休息を楽しんでいる。
…というのは第三者から見た光景であって、実際は副キャプテンのフィディオの機嫌を直しに来ただけなのだが。

「だって、だってマモルが」
「あぁ、とりあえず喋ってもいいけど落ち着け。お前が見たのはエンドウがジャパンのメンバーと買い物に行ってた光景だけだろ」
「ジャンルカ、事態はそんなに単純じゃないんだよ!!マモルの、恋人は、俺なんだから!!!!」
温厚な性格のフィディオにしてはかなりハッキリと怒りを表す事態に、マルコとブラージは顔を見合わせて溜息を吐く。
―――そもそもの原因が、この以外にも嫉妬深いフィディオが円堂が他の男達(決して他意はない)とショッピング中という光景を目撃してしまったからだ。



「大体、ジャパンのメンバーは性格ちょっと悪すぎるよ!!この前マモルが頑張って俺の事恋人って言ってくれたのに、お構いなしに絡んでくるし。唯一の良心はあのヒジカタって人だけだよ…」
「まあ、アイツらもエンドウの事が好きなんだろ。ましてやほとんどがエンドウと長い間関わりを持ってるし。いきなり現れたお前に掠め取られて良い気分はしないだろうが」
「別に俺はブラージが誰かに取られても対して怒りはしないよ。むしろマモルとトレードしてほしいくらいだし」
「オイちょっと待てフィディオ」
はあ、と深く嘆息するフィディオをブラージが軽くデコピンする。
だがフィディオの気持ちも分からなくはない。
あの円堂守という存在は、まるで常習性のある麻薬のようなものである。
あのミスターKとの一件でしかあまり関わっていないのにも拘らず、自分たちの中に円堂守は根強く残っている。

ましてや、名前呼びする程のフィディオにとってはかけがえのないものだろう。


「…ちょっと、マモルの事を考えてたらオーディーンソードぶっ放すよ」
―――訂正、もはやなくてはならないレベルまで進行していたらしい。





「そもそもさぁ、マモルがもっと俺の気持ちに気付いてくれてたら俺だってこんなにいじけなかったさ」
「俺としてはお前の性格に難がありそうな気がするけどな」
「ちょっとブラージ、今は喋らない方がいいよぅ」
時間も程々に過ぎて3時。
もう頼んだ飲み物も氷が解けてしまい、ただ井戸端会議を繰り広げているだけとなってしまった。


「それじゃあ、逆に聞くが」
テーブルに突っ伏してしまったフィディオに、ジャンルカが声をかける。
「お前はエンドウがもっと他人からの恋情に敏感だったらいいな、と言ってるんだよな」
「…そりゃそうさ。どこの世界に恋人が鈍感であってほしいと願う男がいるんだ」
「確かにオレだって、あの鈍感さはどうかとは思う。だけど、逆のことを言えばお前はその鈍感さに救われてるんだぞ」
「―――あぁ、そっか!!エンドウが恋愛事に聡かったらとっくに恋人いるだろうからなぁ」

マルコの言葉に、今度こそフィディオの動きが完全に止まる。
そして、その脳内には映画館さながらに色んな可能性が絶賛上映中であった。



数分を有した後、ようやくフィディオが動き出す。
その顔はもはや般若のように怒りに満ちていて、もはやイケメンUP!!の面影もない。
「そんなの、そんなの許さない!!マモルが俺以外と付き合ってるなんて嫌だ!!」
恐ろしい。咄嗟にブラージはアンジェロの両目を手で覆う。

「ちょっ、ジャンルカ!!煽ってどうするんだよー!!」
「煽るも何も、本当の事だろうが」


いつの間に頼んでいたのか、余裕綽々と新しいエスプレッソを飲んでいるジャンルカだが、実は足が小刻みに揺れている。
そこまで今のフィディオが恐怖の象徴となってしまっている。
お願いだ、今のこの状態をどうにか出来るならなんだっていい!!
神でも聖女マリアでもいいから、誰か!!!!


―――rrr,rrr
そんな神頼み(ぶっちゃけ他力本願)を心の中で祈った時、フィディオの携帯の着信音が鳴る。
最初怪訝な表情で携帯を持ったフィディオだが、液晶画面を見た瞬間喜色満面になる。
(あぁ、ありがとうございます!!国に帰ったら真っ先にミサに参加しますぅうぅぅ)
そう心の中で十字を切ったマルコは、その表情から着信の主が円堂であることを悟る。
「…エ、エンドウからなのか?」
「うん。―――ちょっと出かけてくるから、先に帰っておいてくれ」
「あ、あぁ。エンドウによろしくな」

さっきまでの凶悪な顔はどこへいったのか、爽やかな表情でカフェを出ていくフィディオにはイケメンUP!!が戻ったようだ。
「―――なぁ、ジャンルカ」
「なんだよマルコ」
「…オレ、今度からエンドウを聖女だと認識するわ」








「あっ、おーいフィディオ!!こっちだぞ!!」
場所は少し移動してエントランスエリアの小さな公園。
そこにあるブランコに、円堂は腰かけていた。
「マモル…」
円堂からの電話があったことは嬉しかったフィディオだが、どうしても円堂がジャパンの選手と買い物に行っていた時の情景が浮かんでしまう。
「マ、マモル…。その、さ」
「ん?どうしたんだよ。こっちに座れよ」
円堂に促されるままに、片方のブランコに座る。
ギイ、ギイと体重で軋む。

「…どうしたんだい、マモル。いきなり呼び出したりして」
「あー、あの、そのさ」
モゴモゴと口を動かして視線を逸らしていた円堂だが、意を決して立ち上がる。
「コレッ、やるよ」
その手から渡されたものは、手のひらサイズの包装紙に包まれた何か。
雰囲気から何となく開けていいと察して、丁寧に包みを捲る。



「―――マモル、これ…」
現れたのは、小振りなロケットペンダント。
サッカーアイランドという名を冠するように、その形も刻まれている模様もサッカーがたである。
「フィディオにプレゼントしようと思ってさ!!結構悩んでたんだけど結局ロケットペンダントにしたんだ。ボールみたいなのがあったし」
「マモル…」
きっと、円堂はこれを買いにジャパンのメンバーと買い物に行ったということを何となく察する。
円堂はフィディオが思っている以上に、フィディオを想っていていてくれている。
そんな事実だけで、フィディオの中にあった嫉妬心などなくなってしまう。


「マモル…ありがとう、この中にマモルの写真入れて大事にするよ」
「バッ、バカ!!そんな恥ずかしいこというなよ!!」
ウィンク交じりにそう言うと、マモルが両手で軽く叩いてくる。(まあ多少は痛いが)

そんな可愛らしい反応を楽しみながら、掌のペンダントを弄ぶ。
―――何故か、温かい気がした。








Adoro!!
(俺だけを愛して!!)





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以上、百花さまリクエスト「フィ円でフィディオの嫉妬」でした!!
百花さまにはネタ提供でお世話になったので、こうしてお返しをできて良かったです。
ということで、私には珍しく完璧に両想いです。
スゲーッマジでリア充です。爆発しないでいいよ、もっと絡んで!!
嫉妬ということで、もっとジャパンメンバー目立たせようと思ったのですが、オルフェウスメンバーが目立ってしまいました←
でもあの4人好きなんですよねー。目立たせることができて私的には満足です(
百花さま、リクエストありがとうございました!!

〜この小説は百花さまのみお持ち帰り可です〜