リフエスト6 | ナノ









「ちなみに、連携技を適応者以外で使用する場合重複は認めない」
そんな久遠監督の静かな一言で、またしても不毛な争いが勃発することになった。



「…久遠監督、それはまさか誰かが円堂と連携技を使用したなら、それ以外だと円堂とは一緒に技を使えない、というわけでは…」
「その通りだ」
通訳である鬼道が、あまり分かりやすいというわけでもない久遠の言葉を分かりやすく代弁する。
そしてその瞬間、食堂内が阿鼻叫喚に包まれた。





「おっ、おい!!この中で公式で円堂との協力技あるやつ手をあげろよ!!」
いち早く行動したのは綱海、急いで無条件で円堂をパートナーにできる人物を探す。
「俺はイナズマ一号と、イナズマ一号落とし…だな」
「イナズマブレイク、デスゾーン2…だな」
「俺とはロックウォールダムとトリプルディフェンスがあるッス」
「おっと、俺も忘れないでくれよ!!ペガサスとフェニックスがあるんだからね」
「ちょっと。ジ・アースも忘れないでよ」




そんなワイワイと喋る該当者たちとは違って、その他のメンバーは悔しさに殆どが膝をついていた。
「…俺、円堂の幼馴染なのに…」
「え、円堂さぁん…」
「なんでザ・バースは・・・うううぅぅ」
特に上記3人は涙まで流している。しかも血の涙を。

しかし、この3人の他にも冷たい空気を放つ面々がいた。





「…ちょっとさ、タマシイ・ザ・ハンドで〆てきてもいいと思う?」
「よし、やってきてもいいぞ」
「オイオイ…」
他国のキャプテン+α達である。
というのも、誰も彼もが円堂に魅了され進んで引き抜かれてきた者達なのだが(一部除く)、如何せん状況が凄く悪すぎた。
というのも、元々敵であった人間が仲間に入ったというだけで円堂と連携技を組めるというわけでもなく、その殆どが土下座をするほどに頼み込んで円堂をパートナーにしていたのだ。
そのことに関して円堂は嫌がることはなく、むしろ他国の技に協力できることを嬉しがっていた。



しかし、キーパーである円堂がそうしょっちゅうシュート・ドリブル・ブロック、果てはシュートブロックやロングシュートに参加することは失点の恐れもある。
これが瞳子だったら問答無用でリベロに転向させるのだが、久遠自身円堂を本来のポジションで輝かせたいと考えていたので、今回の規制に至ったのだ。



「でもさー、正直オレ達自体連携技ないんだよな」
「あー。基本的個人技だもんな。マークとディランが羨ましいよ」
「ミー達はファミリーみたいなものだからね、やっぱり連携技も増えるよ」
「…はぁ。じゃあそもそもあんまりオレ達はこの話題に関われないってことなのか」


そんな感じに他国メンバーがしんみりしてきた時、フィディオがおもむろに円堂に近づく。
「…、フィディオ。どうしたんだ?」
「マモル…」
そしてその手は、円堂の両手を包み込む。




「オレと、新しい必殺技を作ってくれないか」






「「「「「「……」」」」」」



比喩表現でもなく、時間が止まった。
誰も彼も動きを完全に止め、その衝撃を必死にリカバリーしようとしている。
「あぁ!!いいぜ。…どんな必殺技にしよっか」
「なるべくシュート技がいいな。女の子が使ってる技…あのファルファラはどうだい?」
「ふぁるふぁら?」
「イタリア語で蝶々って意味さ。そんな技なかったかな」
「んー、バタフライドリームか?こうやって手繋いで撃つシュートなんだけど」
「それだよそれ!!やってみようよ、マモル!!」

しかもあろうことか、そのまま抱きついている。
屈んで頬ずりしている。




―――プチン、と大多数の血管が千切れた。




「なに言ってんのフィディ男、マモルは勿論ボクと連携技を考えるんだよ」
「そういえば円堂、前考えてたブロック技一緒にやらないか?」
「円堂君、是非とも俺とザ・バース2をしようじゃn「円堂さん、俺と一緒に俺達だけの必殺技開発しましょう!!」
「キャプテン、僕と新しい究極奥義考えようよ」
「「「連携技あるヤツは黙ってろ!!!!」」」

先程までの硬直はなんだったのか、ここぞとばかりに円堂へ連携技の開発を勧めるという事態になってしまう。
当初は目が死んでいた3人も見事復活して円堂に詰め寄っている。

「……」
「豪炎寺、お前は自重しろよ」
「…あぁ」
そう言いつつも、鬼道もチラチラと未練がましそうに見ている(実は鬼道も円堂とペアの連携技を持っていない)
チラリと久遠監督を見れば、青筋が浮かんでいる。
ヤバい、ヤバすぎる。もしかしたら今騒いでいる連中全員強制帰国なんて超次元的仕置きなんて可能性も否めない。



どうやって止める、それはもう1つしか手がない。
円堂が、この場をうまく切り抜けるという選択肢だ。
だがあの記念物級の鈍感・天然な円堂が空気を完璧に読んで行動できるとは思えない。
―――あぁ、もうここでの滞在は終わりなのか。
殆ど諦めた面持ちで鬼道は円堂を見たときだった。





「お前たちそんなに新しい必殺技作りたいのか!!?」
今までフィディオにスリスリされていた円堂がいきなりフィディオを引き剥がして叫ぶ。(勿論他のメンバーによって即リアルファイトに突入したが)




だが一応の危機は去ったはずなのに、何故か嫌な予感が残っている。
なにをしだすか、なにを言うか読めないのが円堂守でもあるのだから。


「じゃあ、みんなで新しい技作ろうぜ。誰も仲間外れにされないように、みんなで!!」

「キャプテン」
「円堂君…」
「円堂さぁん…」
「円堂…!!」
「「マモル!!」」



その言葉に先程まで揉めに揉めていた6人すら喧嘩をやめ、感極まったように円堂を囲む。
雨のち晴れ、といったように収まっていく事態を見て、鬼道は息を吐いた。






「じゃあ、メインはボクとマモルで!!!」
「なに言ってるんだ、ここは幼馴染の俺だろ!?」
「なあディラン。俺達もあの争奪戦に行ってみないか」
「いいねェ!!エンドーとメインを張るのはミーとマークで決定さ!!」
「よし。その必殺技のベースはイナズマ一号でいくぞ」





―――前言撤回、まだまだこの騒ぎが終息することはないだろう。





あなたとわたしだけで!!
(横やりなんていらないの)






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お待たせしてしまってすみません、奏様リクエスト『世界で円堂争奪戦・ギャグ』でした!!
…まぁ、いつもの通り一部だけ喋っているんですが、この場にいる全員みんな円堂さんを愛しているという前提なので、目立っていない面々は恐らく心の中でギリギリしてます。
もちろん円堂さんは気づいていません。我が家の円堂さんは基本的に天然鈍感というスキルを保持しているので無敵の防御力を誇っている感じで。

また電波な内容ですみません…
世界×円堂というまさしく阿代ホイホイなリクエストありがとうございました!!


〜この小説は奏さまのみお持ち帰り可です〜