相互1 | ナノ







「なあなあ、エンドー。あっちで一緒にアイス食べようよ!!」
「ははっ。ディラン引っ張るなよー」
「こらディラン。エンドウが転ぶかもしれないだろ」



それは、穏やかでいてどこか激しい昼下がりのことだった。






@ディラン

さっきから、マークとエンドウが手を握って離さない。
円堂の腕を引っ張りつつも、ディランは1人ごちる。
ジャパンメンバーの目を盗んで円堂をアメリカエリアに連れてきたマークとディランだが、まさか目の前に、近くに最強のライバルがいたとは。



というのも、マークはあまり感情を激しくは出さない。
どちらかといえば静、露わにすることもあるがディランに比べれば大人しい印象だろう。


そして、そんなあまり感情や態度を表さないマークが、決して円堂の手を放そうとはしない。
どんなにディランが円堂に話を振っても、今のように円堂を引っ張ってもその手は握られているばかり。
(大体、ミーは最初からエンドーが好きってマークに言ってたのにさぁ!!黙ってるなんて…アレ?)
何かがおかしい。そう、どうして『黙ってるなんて』と思ってしまったのだろうか。

だって、円堂との恋の成就を願うならマークの気持ちは正直邪魔なものだろう。
寧ろディランの円堂に対する気持ちを知って身を引くぐらいするものだろうと思ってはいたが。
(でも、嫌とは思えないんだよねぇ…。なんでだろ?)
モヤモヤしたものを抱えて、ディランは手を引いて駆ける。







@マーク

ディランに引っ張られて多少足取りが不安に感じられる円堂をどうにか支えながら、マークは小走りに付いていく。
東洋人であり、その中でも小柄な部類に入る円堂の歩幅は狭く、ディランのスピードに付いていこうとするだけで精一杯だ。
最初は軽く結ばれていた手は、どこか安心を求めてだろうか、とりあえず離れるようなことはない。
(…そういえば、ディランはエンドウのことが好きだと言っていたな)

まるで明日の予定を言うかのように告げられた言葉は、マークにとてつもない衝撃を与えた。



どちらかといえば自分の思っていることをあまり口に出さない、クールな性格とも言われている。
それに関しては否定はしない。
それどころか冷静に見られていることは自分にとってプラスに働くものなのだから、喜ぶべきものであった。



けれどディランの言葉を受けて、その自分の冷静な部分が木端微塵になる様を感じてしまった。
(でも、ディランを蹴落としたいとは思えない。でもエンドウを諦めることなんてできやしない)

この相反する思考はなんなのだろうか。
どことなく安堵を抱いて、マークは円堂に手を引かれていく。












「お前たちってさ、いっつも一緒だよなぁ」



@:

「「え?」」
口に含んだストローを放し、マークとデゥランは円堂の顔をまじまじと見る。
「だってさ、最初に会ったときは2人一緒だったし、こうやって出掛けるときも3人だろ?」
そういえばと2人は想起する。
確かに自分が円堂と会う時、自分と一緒に互いはいた。
一緒に円堂を引き留めようとするジャパンのメンバーと戦って、映画館やショップに行ったりした。
そう、3人一緒に、互いに敵視しながら。




(あぁ、そうだ。そうなんだ)
(オレたちは1人じゃだめなんだ)





昔からの知り合いであるマークとディランは、その性格の違いからまるで兄弟のような錯覚を感じていた。
ともすれば、今回のように邪魔だけど邪魔じゃない。という思考は、その兄弟を錯覚するようなものなのだろう。

つまり、決して自分1人だけのものにはできない。自分たちは円堂を取り合っているほうがきっと性に合う。
…そんな考えに、2人は辿り着いた。




「ごめんな、ちょっとトイレにいってくる」
「オーケィ、行っておいで」
「迷うんじゃないぞ」
「分かってるって!!」



そうして円堂が席を外したタイミングを見計らって、ディランは口を開く。
「…やっぱり、マークもエンドーを好きになっちゃったんだなー」
「悪いな。お前の円堂に対する気持ちを知っていても、オレはこの気持ちを止められなかった」
「謝らないでくれよ、マーク」
そう笑って、ディランはストローでグラスの氷をくるくると回す。

「…ミーは、きっと気づいていたんだ。マークは絶対エンドーを好きになるって。わかってても、ミーは知り合いを傷つけることなんて出来なかったんだよ」
これが他の人物だったらどうなのだろう。
きっとテレスなんて死んでも御免で、フィディオなら問題無用でボールの餌食だ。

でも、マークならそんなことあまり気にならない。
どんなに妬ましく思ってしまっても、どうにかなってしまう。
「ディラン。オレも同じ考えだ。でもオレ達は互いを否定することも蹴落とすこともできない」


きっと自分たちは決められているのだろうか。2人分の愛情を円堂に与えることを。
だから自分だけで独占しようという案がどこか知らないところで却下されてしまう。



確かに楽しいのだろう。ディランとエンドウ、マークで賑やかにはしゃいでいる様は微笑ましいだろう。

だからこそ、2人は求めるのだ。




「いつかは、円堂の唯一横に立つ人間になりたい」、と。













「てなわけで、これからミーとディランはずっとエンドウを取り合うことになっちゃったね!!」
「あぁ。全く難儀なことになったな」
そう悪態をつきながらも、ディランとマークの表情はまるで悪戯を思いついた子供のよう。


「―――なあマーク、これからは更に協力してエンドーを護らないかい?」
「いいな、それ」
そんな短い会話をして、さっそくマークは机にメモ帳を広げる。
円堂が帰ってこないことをいいことに、2人の会話はヒートアップしていく。




そして、それは漸く席に辿り着いた円堂によって途切れ、3人はまたしても外へ出る。
だが先程とは違い、それぞれの手をしっかりと握って駆けていく。
そのことに円堂は不思議な顔をしていたが、嬉しいのか腕を前後に小さく振って歩く。

そんな円堂を見て、ディランとマークは柔らかい表情を見せるのだった。








激しい感情のその下
(優しい気持ちだけを向けるだけ)





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以上、葵さんへの捧げもの・「マク円ディラで円堂の取り合い」でした!!
んーふー?これが取り合いだとは…笑わせないでくれたまえと言われそうな感じですが…
今現在、あまり円堂に絡んでいないユニコンビ(マーク&ディラン)ですが、アメリカ戦の後には思いっきり円堂に絡んでくれるものだと信じています!!

葵さん、こんなヘボ小説&大変お待たせですみませんor2
ですが自分のマク円ディラ萌えを最大限詰め込んだ小説なので、萌えていただければ幸いですv
…あ、書き直しでしたらいつでも承ります^^←
葵さん、相互リンクありがとうございました!!!!

〜この小説は葵さんのみお持ち帰り可です〜