リクエスト4 | ナノ
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一緒に見た風景は決して忘れえぬものになった。





「ロココ、よく来たな!!待ってたぜ」

世界大会も終わり、それぞれが自国に帰って日常を過ごすようになって2ヶ月。
どうしても円堂に会いたくなったロココは、師匠には内緒で円堂へと手紙を送っていた。
『マモル、いますっごくキミにあいたいです』
稚拙ながらも一生懸命に書かれたそれは、何故か円堂の元へと届けられずに夏未へと届けられた。

だが、それが幸運だったのだろう。雷門によってロココは日本へと招待され、何の問題もなく来日を果たす。
しかも夏未の配慮によって宿は円堂家となり、円堂はその日がくるのを心待ちにしていたのだった。
―――だが、どうしても大介は来ることができないようで、コトアール土産と共に渡された大介からの手紙を解読する円堂の困惑した顔を見てロココと夏未は可笑しそうに笑った。





その後一緒にサッカーやコトアールでの話を聞いたり、雷門イレブンと共に練習に参加したりしている間に、滞在期間である5日間も残すところあと1日になってしまった。






「―――マモル、ちょっといい?」
「ん、ロココ。どうしたんだ」
今日もまた変わらずサッカーに塗れた日を過ごした4日目、夕食も終わって部屋で寛いでいた円堂をロココが呼ぶ。
「…あのさ。お願いがあるんだけど…」
チラチラと視線を泳がせながら、ロココは言いにくそうに言葉を濁す。
自分によく似てなんでもハッキリ言うロココの様子に疑問を感じた円堂は、言いやすいように笑顔を向ける。

「なんだよ、ロココ。言ってみろって」
「う、うん。あのね。


鉄塔に、行きたいんだ」



「え、鉄塔?」
「そう…ボク明日帰っちゃうから、もう一回見ておきたいんだ」
「俺はいいけど、母ちゃん達が良いっていうかなぁ…」
「別に良いわよ?」



扉の方向から、突然声がする。
ロココと円堂がそちらを見ると、そこには温子が立っていた。
「母ちゃん」
「ロココ君明日帰っちゃうんでしょ?だったら良い思い出作ってあげなきゃ」
ハイ、と差し出したのは円堂の携帯。
「危なかったら、すぐに逃げて電話するのよ?それにさえ気を付けていれば行ってもいいわ」

「アツコさん…、ありがとうございます」
「いーえ、大丈夫よ。…私明日用事があって朝からいないけど…、父さんに、待ってるって伝えておいてくれると嬉しいわ」
「はい、ゼッタイに伝えておきます!!」
「じゃあ、楽しんでらっしゃいね」

そう言うと、温子は部屋を出る。
きっと明日の為に準備をしているのだろう。



「じゃあ、行こっか」
「そうだな」








他愛ない話をしているうちに、2人は鉄塔へと辿り着く。
「ロココ、登るとき気をつけろよー」
「ダイジョウブだって。ほらほらマモル、早く行ってよー」
そんな会話をしながら、鉄塔台に到着した円堂は、ロココを引き上げる。
「…やっぱり、街中よりもキレイに見えるねぇ」
「コトアールは、星はいっぱい見えるのか?」
「うん。ニホンと違ってあまり灯りがないから、たっくさん見えるよ」





「…帰りたくないなぁ」
ロココは呟く。
「ダメだと思ってるんだけど、そう思っちゃうんだよ。…あの大会が、続けば良かったのにって」
柵に背を凭れさせ、上体を反らして星を見上げる。
「…ねぇ、マモル」
「なんだ、ロココ」


「このままコトアールに連れ去ってもいい?」
ロココが発した言葉は、2人以外誰もいない鉄塔に微かに響く。
それはまるで提案のようでもあり、懇願のようでもあり、そして幼い求婚のようでもあった。
「…ロココ?」
「だって師匠も喜ぶし、ボクの仲間たちもマモルのことを気に入ってるし―――なにより、ボクがとっても嬉しい」
空を見上げていた視線はいつの間にか真っ直ぐに円堂に向けられている。
「だから、一緒に行かない?」







「ロココ、」
「いいよ、言わなくて。ボクのワガママでマモルを困らせたくないって思ってるのに、思って、るのに…」
きっと別れが迫っているから、焦っているのだろうか。
どこか置いて行かれることを恐れる子供のように、恐れている。

「困ってなんかないさ」
「―――え」



「俺も、コトアールに行ってみたい。じいちゃんに会うためじゃなくて、ロココの仲間に会うためじゃなくて、ロココの産まれて育った国を、見てみたいんだ」
射抜くような視線とともに向けられた直線的な言葉は、知らずにロココを貫く。
目視できないその威力に、何もかもが衝撃を受けてしまった。


「…でも俺達はまだ子供で、自分1人じゃなんにもできない」
だから、と円堂は続ける。
「俺達がもっと大人になったら、俺をコトアールに連れて行ってほしい。一緒に、星を見ようぜ」





(なにを心配してたんだろ)
心の奥では分かっていたはずだ、この目の前の少年が繋がりを軽んじるような人ではないことを。
(ボクは、怖かったんだ。マモルがボクを忘れるような人じゃないって知っていても)





「…うん。そうだね、もっと大きくなってから、キミを連れて行くことにしよっかな」
「だな!!俺、多分ずっと待ってるぞ」
「忘れられたら困るよぉ。絶対、忘れないでね」
「大丈夫だって!!…じゃあ、指切りな」
「うん。ユビキリ」


ゆびきりげんまん、うそついたらはりせんぼんのーます、

「「ゆびきった」」





「でもさ、鉄塔で見る星もキレイだよねー」
「なんだったらさ、ロココが日本に来ればいいじゃないか」
「えー、やだよぉ。だってここにはライバルがいっぱいいるんだから」
「…ライ、バル?」
「そっ、ライバル。だからコトアールに連れて行きたかったんだよ」


「ふーん…(俺の知らないまだ強いキーパーがいるんだなぁ…)」
「うん(でもジャパンの人たちコトアールまで来そうなんだよね)」








ねがいごとはなんですか
(キミといっしょにいることです)







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以上、10日さまリクエストのロコ円でした!!
あまり他サイトさまでは見られない感じのロココでしたが、いかがでしたか?
ゲームでも似ていると言及されている2人ですが、個人的には攻め攻めなロココが好きなので、こんな感じになってしまいました←
それにしても、アニメでのロココ活躍が待ち遠しいですね…何故あの時(タイヤ入手時)絡まなかったし。
とりあえず、もっとロコ円増えろ!!

10日さま、リクエストありがとうございました。これからもこの深海サイトをよろしくお願いしますw
〜この小説は10日さまのみお持ち帰り可です〜