リクエスト2 | ナノ






最近、円堂とやけに親しいフィディオは世界的に見てもサッカーの腕前は随一で、尚且つイケメンである。
だからこそ、イナズマジャパンは彼にとてつもない敵対心を抱いていた。
そう、新たな嵐が迫っているとも知らずに。









ジャパンエリア、宿福前にはジャパンのコートが存在する。
そこではいつも練習や紅白戦が行われており、それ故見学者も多い。
―――だが、何故かこの日だけは見学者も偵察係も全くその姿を見せない。

というのも、現在フィールド上にはとてつもない程の怒りが満ち満ちているからだ。





「なあディラン。オレもエンドウをハグしたいぞ」
「いくらマークでもこれは譲れないね!!んー、エンドウって抱き心地ベリーグッドだねぇ」円堂からの制止がないのを良いことに抱きしめ続けるディランとそれを羨ましそうに見るマーク。

アメリカからの意図せぬ来客の行動に、ジャパンの約90%は歯軋りをする勢いであった。





「俺ちょっとアメリカエリアまで行って土門さんを処刑してきますね☆」
「僕も行くよ。運も良ければ一之瀬君も一緒に葬れるし」
魔人と無限の手をスタンドに従えながら笑顔で話す立向居と、スイッチが入ってしまったであろう吹雪のスゲーッマジでどす黒いオーラに気圧され、一年組は震えながら後退していく。
だってそうだろう、どこの世界に怒りに狂っている先輩達に構えるほど胆の据わった後輩がいるだろうか。
いや、いない。とりあえずジャパンの中にはいない。


「豪炎寺、気持ちは本当に分かるがまあ落ち着け。ファイアートルネード療法は禁止されているはずだぞ」
「…グランドファイアならいいか?」
「そういう問題じゃねぇだろが!!」
チームのお父さんとも名高い染岡の一声によって騒いでいた面々も口を閉じる。


「…とりあえずマークとディランだか。俺達は練習を終えたばっかりで色々着替えやらなんやらをしなきゃいけねぇ。円堂を訪ねるならまた今度にしてくれないか」
日頃とは違って威厳さえも漂うかのように話す染岡を見て、ジャパンのメンバーは2人を見やる。
表情の動きが少ないマークに対して、ディランは染岡を興味津々に眺めている(気がする)


「ユーってドモンみたいだね!!」
ピシ、と確かにそこにいた全員がその音を聞いた。
「なんていうかその、マミーみたいな感じなんだよね」
「どちらかといえばダディの方なんじゃないのか?」
「あっ、そうだね。じゃあダディってことで!!」
「オイコラ」



そんな会話を繰り広げていても尚ディランは円堂に抱きついたまま。
「そろそろいい加減にしろよブラジャー野郎が」
「吹雪、お前はもう喋るな」
キャラすらも崩壊してきた吹雪を染岡に寄越し、鬼道は「はぁ、」と溜息をついてディランを見やる。
「とりあえず、円堂を解放してもらおうか。…こっちもあまり気が長いヤツはいないんだ」
「ごめんな、ディラン」
円堂の言葉を受けて、ようやくディランはその腕から円堂を放す。
「…まぁ、俺達もせっかく来た客人を追い返すようなことはしないさ。コーラくらいなら出せるが寄って行くか?」

「そうだね。なんならエンドウの事をもっと教えてほしいn「マモルゥゥゥゥウ!!」
ディランの声を遮って、聞き慣れた声が響く。
円堂にとっては新しいライバルの、ディランとマークにとってはよく知った、そしてジャパンメンバーにとっては円堂の魅力に堕とされた忌まわしいイタリア人のもの。
「フィディオ!!」
「やあマモル。今日も可愛いね!!それにマークとディランじゃないか。どうしたんだい?」

突き刺さるようなジャパンメンバーの視線を物ともせずに円堂へとハグをするフィディオ。
「あぁ。少しエンドウに会いたくなってな」
「そうそう、エンドウをチャージしにきたんだよ!!」
「ふーん。そうだったんだな」
そう言いつつもフィディオの手は止まらない。
髪を撫で、頬を擦るその行為にイレブンの怒りは噴火寸前である。


「もー、フィディオくすぐったいぞ!!」
「あはは、ゴメンねマモル。そうだっ、イタリアエリアに美味しいピッツァのお店があるんだ。一緒に行こうよ!!」
「あっ、フィディオずるいぞ!!ミー達もエンドウと一緒に食事したいさ」
「エンドウ、アメリカエリアに良いバーガーショップがあるんだ。どうだ?」





「――――よし、豪炎寺君。虎丸君も一緒にグランドファイアG5でいこうか」
「壁山、竜巻落とし行くぞ」
「ひいぃぃぃっ」
それをただ傍観するイレブンではない。
それぞれがそれぞれ除外策を練って実行しようとするものばかりである。
(先程染岡に引きずられていた吹雪は何故か戻ってフィディオをガン見している。染岡は凍らされていた。スノーエンジェルでも発動したのだろう)



「えーとなぁ」
外国人からの猛烈なアプローチを受けながらも円堂は口を開く。
「3人には悪いんだけど、俺絶対他の国の選手と外食しちゃいけないって監督から言われてるんだ…ゴメンな」
誰もが耳を下げた犬を連想するその様子に立向居やヒロトが鼻血を噴き出して倒れ、それを不動がゴミを見るような目で見る。
だがそれを堪えた他のメンバー(一部除く)はガッツポーズをした。
アジア予選でもこんなことがあったのだが、この円堂の様子を見ただけで名残惜しそうに帰っていく姿をみて、優越感を感じたのは確かだ。
今回だってきっとそうだ。ショックを受けたように自国のエリアに戻るだろう。



…そう軽く考えていたのが間違いだったのだろうか。
それをジャパンメンバーが悟るのは、あろうことにフィディオが円堂を抱え持った瞬間だった。


「じゃあ、マモルは今日からオルフェウスのキーパーにするよ!!これでオレ達は同じ国の選手だ!!!」
「ッ、それはないよフィディオ!!エンドウはミー達ユニコーンの選手にするんだから!!」
「きっとカズヤとドモンも喜ぶだろうしな。是非ともユニコーンに来てくれないか?」
「えっ、えぇえぇ」
円堂を抱えて走り去るその姿はまさしく流星のごとく。
ワンテンポ遅れてそれを追うアメリカ組もいなくなったことで、そこに残されたのはジャパンの面々。




「――――とりあえず、意見を求めようか」
「爆熱スクリューで股間消失」
「スノーエンジェルで不全」
「竜巻落としで脳挫傷」
「フォトンフラッシュで円堂君救出」
「魔王・ザ・ハンドで公開処刑で」
そんなスポーツマンシップの欠片もない発言をする彼らの眼は血走っており、もはや円堂でさえも止まられない状態となってしまった。

こうなってしまえば、血が流れてしまうのはいたしかないのかも、しれない。




「よし、ではこれから追跡に入る。各自対象を見つけたら円堂救出後、問題にならない程度に対応に入れ」



そんな鬼道の一声で、恐怖の鬼ごっこは始まってしまったのであった。









君が欲しいんです
(誘拐?愛の逃避行さ!!)





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遅くなってしまいまして申し訳ございませんでした。
アリス様リクエスト「フィディオとアメリカ組と日本代表とで円堂の奪い合い」でした!!
これが…奪い合い…だと…?正直リクエスト内容に沿ってない気がしますが、これが阿代の精一杯です…すみませんorz
でも書いててとっても楽しかったです。また、今度はエロガーさんも入れてワイワイするのを書きたいなぁ。
アリス様、リクエストありがとうございました!!

〜アリス様のみお持ち帰り可です〜