迷子の迷子の王子様
フィディオ×円堂











*捏造フィ円出会い話
*アニメはかすりもせずでした



『キミがエンドウマモルかぁ』

視界に飛び込んできたのは、海の色をぎゅっと押し込めたような色だった。




FFI予選を勝ち抜き、ライオコット島に着いたその日に俺は不思議な出会いをした。

その日の夜、道に迷っていた俺は同じくらいの歳の人を見つけ、道を尋ねようと近づく。
常日頃から鬼道や風丸達に「知らない人には近づかない、着いて行かない」と言われているにも関わらず、だ。

(まぁ、仕方ないよなぁ。みんなこんな初めての場所じゃ見つけられないだろうし)

そう考えて自分の行動を正当化すると同時に、夜の街を1人で歩いているという興奮が足並みを加速させる。

見えたのは、チョコレート色の髪の毛。

それと自分より高めの身長。

(ガイジンさん、なのか?)

「は、はろー…」

自分でも拙いと分かる英語―――といっても簡単な挨拶程度のものだが、それを口にすると相手も気付いたのか後ろを振り向いてくる。




(う、わぁ)

「Buona sera.Anche come per il problema?」

いきなり繰り出された言葉は、全く知らない響き。

要するに、英語ではないということだった。

それを理解すると同時に、涙が落ちそうになる。

「ぅ、ごうえん、じぃ…きどぅう…」

咄嗟に言った言葉に、なにか引っかかるものがあったのか、相手が反応する。

『あー…、えと。キミはニホンの選手か、な?』

たどたどしいながらもしっかりと聞き取れるそれは、母国の言葉。

「お、お前…じゃなくて、アナタは日本語が喋れるんですか?」

『うん、ペラペラってわけじゃないけど。それよりもキミ、ニホンの選手ならどうしてこんな暗いトコにいるのかな』

「え、えと。道に、迷っちゃって」

その言葉を聞いて、あーやっぱり?と笑う目の前の人物。

(どこかでみたような、どこか、で)



いきなり目の前がくらりと歪む。

そうだ、この人は今日目にしたばかりじゃないか。

あの、決勝大会の入場式で。




「イタリアの、選手…?」

『、そうだよ。オレはイタリアチームキャプテンのフィディオだ。キミは…』

「俺は、イナズマジャパンのキャプテン・円堂守だ。お前、サッカーやるんだな!!」

突然の事でつい、相手を[お前]と呼んでしまい、急いで口を押さえる。

『ははっ、いいよ。フィディオって呼んでくれ。それにしても』



急に腕を引かれたかと思うと、自分の背中には腕が回されていた。

『キミがエンドウマモルかぁ。もうちょっと大人びた感じかと思ってたらそうじゃなかったね』

可愛い可愛い、と連呼するフィディオに頭が混乱してくる。

(可愛い、てなんだ?俺は男だし、フィディオも男だ)

「お、俺は、男だから、可愛いていうのは…違うと思うけど…」

『んー、ゴメンゴメン。でも本当に可愛いからさ。Io voglio prenderlo casa con me!!』

(な、なんだろ。今の言葉ちょっとヒヤっとした…)




『で、キミをニホンチームのところに連れて行けばいいんだね?』

「あぁ、もうそろそろ皆が必死に探す頃だからなぁ。…説教、短くすめばいいけど」

『まぁそれだけ愛されてるってことじゃないのかな。ハイ』

笑顔とともに差し出されたのは、フィディオの右手。

「…どうしたんだ?」
『ん?手を繋ごうってことさ。また迷子になったら困るだろ』

キミは可愛いからね、どっかに行かないか心配なんだ。

耳元で囁かれたその言葉に、脳が緊急停止をする。


卑怯だ、姑息だ、狡猾だ。

鬼道から教わった罵り言葉が次々と頭を掠めて消えてゆく。

そして、それよりもさっきから心臓が激しく動いている。

今までに無いくらい、グラウンドを全力疾走したり、試合の後よりもずっとずっと。




『それじゃあ、行こうか。お手をどうぞ』

この心臓の音は、なんだろう。







迷子の迷子の王子様
(導くのも王子様)








Buona sera.Anche come per il problema?→「こんばんわ。なにか問題でも?」
Io voglio prenderlo casa con me!!→「持ち帰ってしまいたい!!」

この後イナズマジャパン'sに遭遇し、いきなり警戒されるフィディオなのであった。






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