芽生えた病
ロココ→円堂
一方通行、それの切なさを初めて知った。
(なんで、守はアイツらとサッカーをしてるんだろ)
自分にサッカーを、GKの技術を教えてくれた恩師が、ニホンのサッカー選手を特別気にしていると気付いたのはいつだろうか。
日本代表のキャプテンを勤めているその人物に、ロココは好奇心を思い切りくすぐられた。
情報の海を巡り得た情報は、決してその道程は平坦なものではなかったということ。
弱小サッカー部というスタート、宇宙人と名乗る者達との戦い。
そして、今度は世界に挑もうとするそれらを束ねる存在。
(気になる、なぁ)
最初はただ好奇心を満たそうとしていただけなのに、逆に溺れて行ってしまう。
果ての無い底なし沼のように、ずぶずぶと。
(早く会いたい、戦ってみたい、喋ってみたい)
―――ボクを、早く認識して?
そうやって過ごしてきたなか、師匠から突然呼び出された。
「ロココ、アジア地区からは日本代表が出場するらしい」
足元が、揺れた気がした。
「… 師匠、それは 円堂守と戦えるってことですか?」
「さあな。一応招待状は送った。待ち合わせは頂上。―――世界の頂点を競うフィールドだ」
そう言いながらも、サングラスに隠されたその瞳には隠し切れないほどの嬉しさ。
「師匠も、守に会いたかったら直接会いにいけばいいのに」
その言葉は、黙殺されてしまったけど。
円堂守を知るたびに興味が募っていくことと比例して、疑問も同時に湧いてくる。
あのチームにいて守は幸せにサッカーできるのか、ということだ。
宇宙人達との資料の中で見つけた、FPユニフォームの守の写真。
GKの自分を否定された守はどうなのだろう。
その写真に写る通り、笑顔のままなのだろうか?
「それを近くにいるチームメイトが気付かないなんて」
増大する希求、嫉妬、おおよそ今までの自分には決してなかった負の心たち。
しかし、それを消そうとは思わないし、思えない。
「ボクに魔法をかけて、病気にしてくれたんだから…守には責任とってもらわないとなぁ」
大丈夫、簡単なことなんだ。
ただ自分の所に来てもらって、一緒にサッカーをする。
そしてそのキラキラしてる瞳にずっとボクを写すこと。
それだけでいい、それだけでボクの病気は沈静化する。
なぜなら薬のない病の薬は
キミなんだから。
芽生えた恋心という名の病
(誰か1人だけが手に入れれる特効薬)
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