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「はい、久遠です。…大介監督ですか。娘さんの具合はいかがですか?はい、…円堂が?はい、分かりました。至急鬼瓦警部に連絡させていただきます。はい」
ピ、と久遠は電源ボタンを押して通話を終了した。
しかしその手は小刻みに震え、額には冷や汗が浮かぶ。
「今何が起きているんだ…。円堂…」




「あっ!また失敗かぁ」
「んー。なにがいけないんだろうね。タイミングもバッチリなんだけど」
「そうそう、その勢いだ!壁山もダッシュしろー!!」
「だから!お前がもう少しスピードを落とせばいいだろう!」
「はっ、佐久間クンは何を言ってるのかねェ」
良く晴れた朝。
今日も宿福前のグラウンドではイナズマジャパンの面々が元気にサッカーをしていた。
既存の技を磨き、己の身体能力を高めようと努力し、そしてまだ見ぬ新しい技を形にしようと模索する。
それは“いつも”の光景であるから久遠は苦しい。
今起こっていることが、現実が。

だけども伝えなければいけないのもまた事実。
いつまでも隠し通せることではないし、彼らもまたそれを良しとはしないだろう。


「――全員、集合!!」
久遠の声が、グラウンドに木霊した。






「…え?」
東は、そんな素っ頓狂な声しかだせなかった。
東だけではない。その場にいた全員…いつも冷静な鬼道でさえ、口をぽかんと開けている。
沈黙が続き、さらに沈黙が続く。
誰もがそれを信じようとはせず、また信じたくもなかった。

円堂が、家族ごと姿を消したなどど、絶対に。





「――大介さんが病院に行き、ご自宅にも行ったそうだが…円堂と親御さんは、どこにも居なかったらしい。それどころか円堂が帰国するきっかけになった事故も、なかったそうだ」
「そんな…!だって、お医者さんが確かに円堂くんのお母さんが事故にあったって言ってたのに…!!」
秋は蒼白な顔色で言う。
恐怖からだろうか――しっかりと自分を抱きしめ、震えてもいた。
「…待て、木野。その医者はなんて言う名前だったんだ」
「ご、豪炎寺って言ってたけど…」
引っかかるものがあったのか、豪炎寺は秋を問い詰める。
そして秋が口にした名前は、豪炎寺の父だった。


「――やられた!!」
豪炎寺は猛る。
手に持ったサッカーボールを力の限り地面に叩きつける様は今までに見たことがなく、場は更に緊張感を増す。
いつも静かに怒りを露わす豪炎寺と同一とは思えなかった。
「木野、電話は一体どこに来たんだ!?」
「え…えと、私の携帯に直接。前のエイリア学園と戦った時に電話番号を病院の人に教えていたの」
「まさか…」
久遠が何かに気付き、豪炎寺を見る。
そして豪炎寺はそれに頷いた。


「監督は、俺の父さんと話したことがあるんですよね。だったらもしその人物が父さんでなかったらすぐに分かる。――でも木野は父さんと面識がない。だからソイツが父さんじゃなくても、父さんと信じてしまったんだ」











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