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「おかしい」
そう呟いて、風丸は携帯を折りたたんだ。


「―――円堂と、連絡がつかない?」
宿福に集った一同は、風丸の言葉を鸚鵡返しした。
「あぁ。何度電話をかけてもずっとダイヤル音だし、メールも返信がない」
「温子さんと何か話してる…とかじゃ、なくて?」
「そうであっても連絡は寄越してくるべきじゃねェの?アイツはキャプテンなんだ。それくらい判ってるだろが」
チッ、と舌打ちをして不動は目の前のグラスを傾けた。

「……風丸、それに東。お前たちは3日前何かを話していたな。あの事とも、5年前とも言っていた。それはなんなんだ?」
「、鬼道」
ゴーグルのレンズから垣間見える鬼道の瞳に射抜かれ、風丸と東は竦む。
まるで責めているような、その剣呑な眼に逃げ出したくなる。
「まあ待て鬼道。まだ円堂の身に何が起きたとも分からないだろう。今日は大介さんが日本に戻る日だ。…円堂がいるかどうか見てもらおう」

そう間に割り込んだ豪炎寺は鬼道を諌めるが、当の本人とて冷静ではないのだろう――強く手を握りしめていた。
「あぁ、そうだな。…俺たちは、練習を続けよう。どうせあいつの事だ、戻ってきたらすぐにサッカーしようと
言いだすからな」
「うん。キャプテンがいない今のうちに新しい必殺技を完成させて驚かしちゃおう」
「そりゃいいなぁ。じゃあ土方ァ、オレたちで新しい連携技でも作るか!」
「おう!どんな技にするんだ?」



先ほどの険悪な雰囲気はどこへやら、チームメイト達はそれぞれ思い思いにまだ見ぬ技への想像を膨らませる。
「―――鬼道、すまないな」
風丸は静かに頭を下げ、謝罪の言葉を口にする。
「いや、俺のほうも言い過ぎたな。すまなかった」
「本当はお前たちに言った方がいいとは思っている。…けどな」
「アイツ…覚えてないんだ。5年前になにがあったのか、なにも」
東は苦々しげに話す。
それは本人が知らない、円堂への災厄だった。


「だからオレたちはその事を隠すことにした。その方がアイツにとっても良いはずだし、周りがそれを知って円堂への態度を変えてほしくなかった」


ああ見えて円堂の心は酷く繊細だ。
他人の心の動きには敏感なのに、その理由を聞くことが出来ない。
そして悩みは蓄積して、終には爆発してしまうだろう。

そうなってしまえば円堂はどうなるのだろう。
変わらずその笑顔を浮かべれるのか、否か。



「本当にすまないと思っている。けど、これだけは絶対に踏み入らせたくはないんだ。これは俺たちだけが知っているべきことだから」








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