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「大丈夫っすかね、キャプテンのお母さん…」
「確かにな。だが足を骨折しただけで済んだんだ。じきに良くなるだろう」
「うん。キャプテンもなるべく早く戻るって言ってたし、僕たちは待っていよう。きっと大丈夫だよ」

そんな言葉を交わして、イナズマジャパンの面々は日本に飛び立つ飛行機を見上げた。






コトアールエリアから帰ろうとした円堂にかかってきたのは、日本からの電話。
発信は稲妻総合病院からで、なんでも円堂の母・温子が事故にあったとの事。
その内容に事故で肉親を亡くしたりとトラウマを持つ数名が円堂を心配したが、不思議なことに円堂は動揺を見せたものの、平常心のままに母親の容体を訊く。

いや、もしかしたら彼は平常心ではなく、本当に取り乱すところだったのかもしれない。
しかし仲間が一緒にいて、そして自分の祖父である大介もその場にいたからこそ心を落ち着かせることが出来たのか。

そして電話を終えた円堂が一堂に言ったのは「一回日本に帰る」ということ。
だがそれを誰も反対することはなく、むしろ早く帰れという意見だった。


「…守、ワシも一緒に帰ろう」
自分の娘が事故にあってしまったという事もあり、大介も円堂と一緒に帰ると提案をする。
「いつかは帰らなければと思っていた。――今の今までアイツに苦労ばかりかけてしまって、親失格かもしれない。それでもワシは、温子に逢いたい」
40年間、逢うことも叶わなかった愛娘が入院している―――大介は妻と娘を日本に残した時のことを思い出す。

大怪我を負ったまま、コトアールへと連れ出された時、恐怖よりも残していく母娘への罪悪感が強かったこと。
いつか日本に帰り、また2人と逢う事。

妻は亡くなってしまったが、娘は…温子はまだ息災なのだろう。
だからこそ、今、彼女が傷ついている時に自分が行かなければいけない。
例え残して行ってしまっても、40年も会えなくても、自分にとって彼女は娘なのだから。




「―――じいちゃん、じいちゃんは後から来て」
そう言って、円堂は苦笑する。
「じいちゃんはコトアールの監督だ。…だから、勝手にこの島から出てっちゃダメなんだろ?」
「だが…!!」
「そうだよ、マモル!キミのお母さんが―――ダイスケの子供が入院しているんだ。ダイスケはすぐに日本に帰るべきなんじゃないの?」
円堂の言葉に大介が反論しようとし、ロココもそれを肯定する。

「――大介さん、確かに貴方はリトルギガントの監督ですが、それと同時に彼らの保護者でもある。…私とてすぐに彼らを私の保護下にしたいのですが、やはりそう簡単にはいかない。書類を大会本部へと提出し、それが受理されるまで…2日はかかるでしょう」
今までただ話を聞いていた久遠が口を開き、大介を説得する。

大介自身もそのことに気付いていたのだろう。
唇を噛み、掌を握りしめて―――分かった、と呟いた。
「ワシは手続きが終わったらすぐに日本へ戻ろう。…守、先に行っててくれ」
そう言って、大介は宿舎へと早足で向かう。

そんな大介を見て、円堂は少し笑った。


「…じゃあ、俺たちも行こう。おそらくイナズマジェットの準備も出来ているはずだからな」
鬼道に急かされ、一同はキャラバンへと乗り込む。
「マモル…、キミのお母さんによろしく。帰ってくるときは、ちゃんと連絡してよ?」
ロココは円堂の手をしっかりと握り、言う。
「ああ!帰ってきたら、いろんなエリアに行こうな、ロココ」
それに円堂も応え、そして手を離す。





これが別れになるなんて誰が思わないうちに、別れは訪れてしまったのだ。








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